介護と調理

多くの介護施設(入所系だけでなく通所系も含む)では、調理は介護職員ではなく、専門の調理職員の仕事だろう。ただ、グループホームや小規模デイでは、調理も行っている介護職員は多いことと思う。

私は、職場では食事を作ったことがない。しかし、エントリ「食事が作れるようになりたい」で書いたように、できるものなら作れるようになっておきたいと思っている。
しかし、皆がそう思っているわけでもあるまい。調理をしなければならないなら退職する、という介護職員だっているだろう。転職すればいくらでもそういう条件で仕事ができるのだから。

介護職員が食事を作ることのメリットは。
やはり、食事も介護の一部にできるということ。体調などを見て、メニューや量など調節することができる。そうした利用者さんの細かな情報は、専門の調理職員には伝わりにくいし、また介護職員としても、細かな調節を依頼するのは面倒をかけるようで気が引ける。
また、利用者さんに手伝ってもらいやすくなるというのもあるだろう。もちろん、「手伝ってもらう」と言っても、それにより職員の調理の手間が減るという意味ではない。却って時間も手間もかかるだろう。しかしレクを提供すると考えれば、調理とレクとの両方を、別の時間に行うよりも効率が良いとは言えそうだ。

実のところ、うちの施設もそういう方向にもっていきたい。しかしどうなるかな……

栄養補助飲料

経鼻(鼻からチューブを通す)、あるいは胃ろう(腹部に孔を開けてチューブを通す)により注入する濃厚流動食は、飲み物として口から飲むこともできる。そのために味の付いた製品も数多くある。
美味しいかというと……私は7、8年前に一度、味の付いていないプレーンなものを一度飲んだことがあるだけなのだが、個人的には「無理!」と思った。しかし缶飲料のカロリーメイトを飲める方であれば、特に抵抗なくいけるかもしれない。

チューブを介して摂取するにしろ、口から飲むにしろ、それが医療保険適応となるかどうかは、薬価収載されているかどうかにかかっている。こうした製品は、医師に処方してもらえば医療保険請求が可能であり、つまり利用者さんの費用負担も少なくて済む。
そうでない場合、つまり薬価収載されていないもしくは処方してもらえない場合は、保険外で購入するしかない。
薬価収載されているものといないものとの質の違いは、ほとんどないようである。つまり薬として薬価収載するのも、食品として一般に販売するのも自由なのだ。

では、それを施設に入所されている方が購入する場合、その費用は利用者負担とすべきか、それとも施設負担とすべきなのだろうか。
食費を徴収しており、なおかつ普通の食事が食べられずに流動食のみをお出しするのであれば、流動食の費用は施設負担とすることに異論はないだろうと思う。しかし通常の食事と併用する場合は?
この場合でも、あくまで食事を補うものであり、利用者の嗜好によるものではないので、施設が負担するのが筋だろうとは思う。しかし、それでは施設の持ち出しが多くなり、その方の食事代に関しては赤字になってしまう。
そうなると施設としては、補助的にお出しすることには慎重にならざるを得ない。

エントリ「老企第54号」で書いたことと共通するが、施設が負担する項目を増やすことは、利用者負担を抑えるためには有効だが、そのことで却って利用者さんが不利益を被ることが往々にしてあるのだ。施設としては経営を考えなければならないので、これは現在の制度上では致し方のないことかもしれない。

うちの施設の場合、胃がんのため食欲がなく、あまり食べられない方は主治医が処方しているが、そこまでではないが栄養状態が心配される方は、自費での購入をお勧めしている。時々無料サンプルが手に入った時には差し上げているが、常にそうした対応ができるわけではない。

濃厚流動食を飲み物として初めてお出しする時には、飲んでもらえなかったらどうしようという不安がつきまとうのだが、意外に飲んでいただけるものである。もしかすると、今は、私が飲んでみた頃よりも美味しいのかな?

もしも飲んでもらっていなければどうなっているか、それははっきりとは分からないが、以前にも食事量が低下して入院されたことのある方もいるので、以後入院せずに済んでいるのは日常的に飲んでいただいているおかげ……かもしれない。

最近ではドラッグストアなどでも売っているが、やはり通販の方が安いようだ。
うちの施設で入居さんに変わって代理購入しているのは明治のメイバランスである。味のレパートリーも多い。

とまあ、ステマっぽさ全開の内容になってしまったが、別に明治さんから何かもらっているわけではない。
他の同種の商品でも大した違いはないと思うので、入手のし易さや価格で選べば良いと思う。

常識にも例外はある

刻み食やミキサー食は、見た目も食感も悪く、食べる楽しみを失わせる。だから可能な限り常食を食べてもらえるようにすべきだし、それが叶わなければ、咀嚼や嚥下のしやすさに優れ、かつ見た目も損ねない、ソフト食などにするのが良い。

……というのは、介護の常識である。
しかし例外というのは何ごとにおいても存在するもので。中には、自ら刻み食やミキサー食を希望される方もいる。

理由は様々である。
自歯がなく、また義歯を使うのも嫌だから。
義歯が合わないと思い込まれているから。

時には、試行的に常食をお出ししても喜ばれず、刻み食に戻すと「やっぱりこの方が食べやすくて美味しいわ」といたく喜ばれたりする。
「刻み食よりも常食の方が良い」といった常識に基づいた支援が、時には援助者の自己満足に過ぎないこともありえるのだと改めて思う。

そして、こうした援助者の独りよがりな感覚は、現場の者よりも、離れたところから眺めている者が陥りやすい。ケアマネや管理者などだ。
だから私は、現場にいない者が口にする「実践」という言葉は鵜呑みにしないし、自分も現場に入り続けていたいと思っている。

と言っても、利用者さんの言葉は常にそのまま受け入れて良いというわけでもないのももちろんだ。援助者が、利用者さんの希望を口実に手を抜くことがあってはならない。
それが介護の難しさだ。これはどこまで行っても「これでよい」という到達点はない。

そして、それが介護の面白さでもある。
この面白さを知らずにだらだらと勤めている者は、本当に可哀想だ。

納豆

今日はただの個人的な、くだらない話で申し訳ないが。

私は納豆が苦手である。

あの、見た目と匂いが……

当たり前と言えば当たり前なのだろうが、介護施設の食事でも納豆は出る。
この仕事を始めて間もなく、老健で2ヶ月ほど介護職をしていた時には、頼むから自分の勤務の時には納豆が出ないでくれと本気で祈っていた。
幸いなことに一度も勤務が当たらなかった。もし当たっていたら、まともに食事介助などできなかったのではないだろうか。

しかしそれから年数を重ねていくうちに、何とか慣れてきた。直接の食事介助はしなくとも、配膳下膳などから、少しずつ慣れていったのだ。
現に今の職場では、ちゃんと食事介助をすることもできており、「納豆が嫌なので食事介助はできません」と逃げ出さずに済んでいる。

しかし、それでも。
入居者さんで納豆が大好きな人がおり、お部屋で納豆を一人で食べていて、容器を服の上にひっくり返してしまったのを発見した時には、以前老健にいた時に体験したような、訪室したらあたり一面便まみれだった時などとは比べものにならないほどの衝撃を受けた。見なかったことにしてその場から立ち去ろうかと本気で考えたくらいである。

もし私が将来要介護状態になって、何も知らない介護職員から納豆を食べさせられたら……と思うと心底身震いする。
だから、利用者さんの嗜好を知っておくのは大切だとつくづく思う。下手をすると、苦痛を与える可能性さえあるのだから。

私も、今のうちに自分の趣味嗜好を書き記しておこうかな。納豆と、あとはカリフラワーも大嫌いなので食べさせないでくださいと……
くさやとか、ブルーチーズとかはさすがに介護施設の食事では出ないだろうから書いておかなくてもいいか。

経管栄養の方の食費

平成17年10月に、翌年4月の制度改定に先立って、介護保険施設入所者の介護報酬より、居住費つまり居室代と食費が介護報酬より控除されることとなった。
これは、在宅の要介護者であれば当然に負担している居住にかかる費用が、施設に入所していれば自分で負担しなくて済むというのはおかしい、という考え方によるものである。

これにより、居住費も食費も、施設が自由に設定できるものとされた。
しかし自由にして良いと言われると逆に困ってしまうもので、結局は多くの施設が、国が示した基準費用額(1日あたり1,380円)に横並びとなった。

ちなみに、それまでは食材費として780円が自己負担となっていた。調理にかかる費用(人件費その他)は介護報酬の中に含まれていたが、この分が介護報酬から切り離されて利用者負担となったために、1,380円ほどが適当ということになったのである。

と、介護保険施設での食費について参考までに大まかに述べたところで、今日の本題。

うちは介護付有料老人ホームであるが、食費は1日1,000円の設定である。
入社当時は、安っ! と思ったものだ。何しろ相場の2/3程度なのだから。

そんな安い金額に設定した理由は、特に誰からも聞いていないが、容易に想像できる。

どういうことかというと、食費を高く設定すればするほど、入居者さんが口から食事を食べられなくなった時に、施設の減収分が大きくなってしまうのだ。
入居者さんが経管栄養になれば、食事を施設から提供していない以上、食費はいただくことができなくなる。つまり、仮に食費を1日1,500円にしていると、お一人の方が経管栄養になると月に45,000円の減収になってしまうが、1日1,000円にしておけば、減収は30,000円で済むわけだ。

私が勤めていた老健では、経験栄養の方が摂取される濃厚流動食はむしろ普通の食材よりも安く済むので、却ってありがたいくらいだった(ただし職員の負担はもちろん増えるが)。
この、食費を徴収できなくなる問題は、有料老人ホームだからこそ生じるのである。

もちろん、1日1,000円で、食材費だけでなく調理職員の人件費などの諸経費も賄うことなど不可能。その分の費用は他の料金に転嫁せざるを得ない。

入居者さんが経管栄養になれば、職員の負担は確実に増大する。にもかかわらず減収になってしまうのでは、有料老人ホームが経管栄養の方を積極的に受け入れたくないのも当然である。

この事態を回避する方法がないわけではない。
栄養剤を主治医に処方してもらうのではなく、施設が医療保険外で購入する代わりに食費を徴収すれば良いのだ。しかしそれでは入居者さんに、主治医に処方してもらうよりも高い金額を請求することになってしまう。
痛し痒しである。

頑張って経管栄養の方を受け入れると、却って減収になる。
それでも私たちは、入居者さんやご家族さんが安心して暮らせる場所を目指して、頑張っていく方を選んでいる。

誰にも分かってもらえないけどね。