腰痛と廃用

最近、腰痛の酷い入居者さんの話。

診断名は第5腰椎圧迫骨折。痛いのは当然である。痛み止めと湿布が処方されているのみで、結局はそれで痛みが落ち着いてくるのを待つしかない。

当初は、車椅子に座っている間は痛みの訴えはなかった。しかし最近では、車椅子上でも痛みを訴えられ、食事中も、両手はアームレストを掴んでお尻を浮かせようとしているだけで、一向に食べられない。

そのため、職員は居室へ食事を運ぶことが多いようだ。理由は、「痛がっているので、無理に食堂へ連れてくるのは可哀想」といったところ。
しかしベッドをギャッチアップするだけでも痛がるので、居室で食事しても摂取量は変わらない。であれば、廃用を防ぐためにもできる限り離床すべきだと思うのだが、「可哀想」という気持ちも分からないことはないので、各々の職員の判断に任せている。
まあ単に、痛がっているところを車椅子に移乗してもらって連れてくるのは面倒、という者もいるだろうとは思っているが。

何というか、ベッドから起きられなくなって機能がどんどん落ちていく方をどれだけ見ているかで、こうした対応の違いがでてくるのかもと思った。今、可哀想だからと寝かしておくと、機能はどんどん低下する。ついでに言えば、職員の手間だって大きくなる。

自分たちの仕事を自分たちで勝手に増やし、忙しがるのは、もういい加減にして欲しい。

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嗜眠と食欲低下、そして失禁

最近食事が摂れなくなってきた入居者さんの話。

入居者さんの食事量が次第に、あるいは急激に減ってしまい、さてどうしたものかと我々が頭を悩ませることは少なくない。むしろ日常茶飯事である。
その都度対策を考えるのだが、残念ながらそうそううまくいかないのが現実。ひとことで食欲低下と言っても、原因には様々なものがあるのだ。

さて、その方の場合、少しずつ食べられる量が減ってきた。
付けられている診断名はパーキンソン病であり、確か10月の頭に主治医のところ(地域で一番の総合病院)を受診した際、アーテンの副作用では? ということで、これが2mgから1mgに減量された。
しかし改善されることはなく、最近ますます食べられなくなってきた。目を閉じたままで眠り込んでいるように見えたり(ただし声をかけるとすぐに返答がある)、箸でつつき回すだけだったり、時には左手の人指し指の先に積み上げていったり(本当にこういうことをされるのである)されるだけで、一向に口には運ばれない。
食事だけでなく水分摂取量も少ない。基本的に甘いものが好きな方なので、栄養補助飲料(メイバランス)で補っているが、それも充分とはいかない。体重は1年間で8.5%減となった。

昼夜を問わず眠っている時間が長く、いわゆる「嗜眠」のように思え、とするとレビー小体型認知症を疑うべきなのかもしれない。
また、その方はとにかくご自身から言葉を発せられることがない。こちらから声をかけると返事をされるのだが、それをどの程度理解されているのか掴みにくいところが以前からあるために分かりにくくなっているが、うつ状態なのかもしれない。こうした状態にはジェイゾロフトがいいと河野先生が確か言っていたな……

また同時に尿意もなくなっているようで、以前はお一人で行かれていたのが、最近はトイレに行くのは職員が誘導した時のみであり、またほぼ常時失禁状態にある。
夜間もトイレ誘導をしていたのだが、最近は拒否が強く、とても起きてはいただけない。しかしそのまま朝を迎えてしまうと失禁で全更衣+防水シーツ交換となるので、やむなく臥位のままでパッドのみ替えさせていただくのだが、これも抵抗が激しく容易ではない。
トイレ誘導が不可能、かつ失禁があるとなればオムツを使っていただくしかないが、そもそも抵抗のためオムツ交換ができなければ意味がない。私は明日夜勤なので、試供品でも使って試してみようかと思っている。

だいぶ話が逸れてしまったが、認知症状に対する薬物治療、特にレビー小体型認知症に対する治療方法がもっと進み、広まることを切に願っている。

ロコモ

ロコモティブシンドローム(Locomotive syndrome)という言葉をよく目にするようになった。

これは、日本整形外科学会によると、「『運動器の障害』により『要介護になる』リスクの高い状態」とされている。

上記サイトから引用を続ける。
運動器の障害の原因は大きく分けて2つ。運動器自体の疾患(筋骨格運動器系)、そして加齢による運動器機能不全である。これらは「メタボ」「認知症」と並び、「健康寿命の短縮」、「ねたきりや要介護状態」の3大要因のひとつになっているという。

ところで、ロコモという呼び方はどうも可愛らしい印象があり、個人的には馴染みにくい。この言葉を目にするたびに、Little Evaの「The Loco-Motion」という曲が頭を回ってしまうのである……

この曲はKylie Minogueらがカバーしているし、個人的には平野文の歌ったヴァージョンが印象深い。
平野文は『うる星やつら』でラムの声を演じていた方でもあり、なかなか歌声もキュートだ……って、ロコモの話はどうなった?

認知症の定義が変わる

何を今さらという話だが。
認知症は英語でdementiaという。これはラテン語のdemensという言葉に由来し、de+mens、すなわち精神・心がないという意味であり、古くは狂気を表していたと言われる。
実は、「痴呆」「呆け」よりもさらに差別的な言葉であるのかもしれない。

そんな理由から、今年に改訂され第5版となったDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)、つまりアメリカ精神医学会のガイドラインでは、dementiaという名称が変えられるなんていう話をどこかで読んだが、結局どうなったのだろうか。

DSM-5では、認知症の定義で、記憶障害が必須ではなくなったという。確かに認知機能に障害のある方で、目立った記憶障害がみられない方はいるものである。
代表的な例はレビー小体型認知症だろう。最初にアルツハイマー型認知症と診断されるタイプの方は、まず記憶障害が現れているが、パーキンソン病と診断されるタイプの方は、記銘力はかなり保持されていることもある。

DSMの定義が変われば、日本での「認知症」の定義も、多少なりともそれに影響されるのではないか。
この結果、認知症と診断される方は、これまでの予想を上回る勢いで増えることになるかもしれない。

これによる影響は2つ考えられる。1つは、正しい診断がなされることによって、より多くの方が適切な治療を受けられるようになる可能性。もう1つは、事実上定義が広がることによって、認知症と診断されて薬物療法の対象となる方が増える可能性である。

いずれにしろ、これからは「認知症には記憶障害が必須なので、あの方は記憶障害がない以上は認知症ではない」と言いにくくなったのは確かだ。

かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン

7/12、厚生労働省が「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」を公表した。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000036k0c-att/2r98520000036k1t.pdf

基本的には「向精神薬はなるべく使わない」という方針なので、製薬会社がこのガイドラインの普及に協力するはずもなく、果たしてこれが多くの医師の目に留まるのかという気はするが……いずれにしてもこういう内容が広まれば、それは明らかに進歩である。

しかし、これは医師にだけ広まっても意味はない。直接認知症ケアに当たる者たちの資質向上も必要である。でなければ、自分たちで周辺症状を悪化させておいてその対応に疲弊するという現状が少しも変わらないどころか、ますます悪化する。

少なくとも認知症介護実践者研修の内容くらいは全ての職員が習得していなければなるまい。
だが現在の介護現場にそんな余裕はない。とにかく、「適性の低い職員であっても辞められたら現場が回らなくなるので、厳しい指導ができない」という現状を何とかしなければ、良い認知症ケアができないどころか虐待さえなくせないのではないか。

とまあ話が少し逸れてしまったが……
このガイドラインについては、私は医療職ではないので内容については云々しないが、ちょっと「ん?」と思えることがないでもない。それでも、こうした前進は歓迎すべきことである。