利用されない地域密着型サービス

10/22、会計検査院が厚生労働大臣に対し、改善処置を要求したという。

地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金等により整備した地域密着型施設の利用状況について
http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/25/h251022_4.html

交付金によって整備した地域密着型サービス事業所、とりわけ認知症対応型通所介護と小規模多機能型居宅介護において、開設後全く施設が利用されていなかったり、利用が低調となっているものが多数見つかったらしい。

全国299事業者の326地域密着型サービス事業所について調査したところ、232事業者の247事業所(整備交付金42億1218万円)で平均利用率が50%を下回っており、このうち87事業者の94事業所では、平均利用率が30%にも達していなかった。
3分の2以上の事業所で利用率が50%以下というのはさすがに異常な事態であると言えよう。

その理由としては、認知症対応型通所介護は通所介護とのサービス内容の相違が分かりにくく、また介護報酬も高額であるため、認知症の要介護者であっても通所介護を利用することが多いこと、そして小規模多機能型居宅介護は、通所を中心とした利用を想定しているが、利用者は宿泊を中心とした利用を望む場合が多いことが挙げられている。

そうなんだねえ……

認知症対応型通所介護については、私が知っているのは一事業所のみ。特養併設で、通所介護と一体化してサービス提供されており、その日の利用者のうち誰が認知症対応型通所介護で、誰が通所介護なのか全く分からないような状況だった。
中には、小規模であるというメリットを生かし、馴染みの関係の下で調理を共に行うなどしている認知症対応通所介護事業所ももちろんあるだろうとは思う。しかしこうした差別化が図られていなければ、利用者が通所介護を選択するのは当然ではある。

小規模多機能型居宅介護は、通所を中心にし利用回数をなるべく抑えたい事業所側と、宿泊を中心にし利用回数を増やしたい利用者側とで思惑がずれるのは分かりきっていることではあるが、それにしてもそんなに利用率が低いという認識はこれまでなかった。
定期巡回・随時対応型も同じずれを内包しているが、さて。

それにしても40億円以上の交付金が活用されていなかったという事実。
数年後には、サービス付き高齢者向け住宅への補助金が無駄になったという報告がなされることになるんだろうな。

在宅介護の費用

公益財団法人家計経済研究所が、「在宅介護のお金と負担」という調査結果を公表した。
http://www.kakeiken.or.jp/jp/research/kaigo2013/

同居している要介護高齢者のために家庭が1ヵ月に使ったお金は、平均で6万9千円(中央値では4万4千円)だったという。
中央値に比べ平均値が高いのは、データの分布が中央値を境にして対称に分布していないためだろう。これはおそらく、サービスが限度額内に収まらずに全額自己負担となる場合、費用が一気に上がり、そうした家庭が少なくないためではないかと思う。

また興味深いのは、介護サービス利用料、それ以外の費用共に、介護度が高くなるほど金額も高くなっているのだが、唯一、介護サービス以外の費用(おむつなどの購入や医療費など)が、要介護3よりも2の方が高くなっていることである。
詳しい内訳を見ると、介護食、排泄以外の介助用品、理髪料、税・社会保険料といった費用が安くなっているのがわかる。この理由は何なのだろう?

介護保険の居宅サービスの利用料について、保険給付対象分と、限度額を超えての全額自己負担分の割合を見てみると、保険給付対象分の平均は限度額の5~7割程度である。
一方、全額自己負担分の平均は約2万4千円(中央値は500円)となっているので、自己負担分が多い方は多いのである。
この結果が、それだけの出費を余儀なくされている要介護者が多いからなのか、それとも、限度額やニーズにこだわらず、希望に応じてどんどんサービスを入れる余裕のある家庭が多いからなのかは、この調査だけではわからない。

「介護を始める前に比べて、総世帯収入が減った」と答えているのは全体の半数強。
場合によっては、同居を始めたことで要介護者の年金などの収入が家計に算入され、収入が増える場合もあるかもしれない。しかしそれでも半数の家庭で収入が減ってしまっているのは問題と見るべきだろう。

認知症も、程度が重くなる方が費用がかかることがわかる。こうした結果を見ると、認知症を身体機能の障害と一緒にして要介護度、そして区分支給限度額を決めるよりも、ドイツの介護保険制度のように、認知症ケア分を別建てにした方が適当ではないかと思える。

とにかく、この結果からは、区分支給限度額というものがある以上、介護保険制度は我々に安心感を与えてくれないのがわかる。
さらには「認知症になったら困る」という不安もなくなりはしない。

こうした結果を踏まえ、制度がより良い方向に向かってくれるといいのだが。

温泉へ行こう

今日は休みだったので、車で2時間弱のところにある温泉へ日帰り入浴に行ってきた。
私が今までに入った中で一番好きな温泉(正確には一番好きな浴室かな)なのだが、このところご無沙汰だった。平日の昼間だったため貸し切り状態で、のんびりと湯に浸かってきた。

お風呂の湯が温泉であることを売りにしている介護事業所は少なくない。まったく羨ましい限りである。
温泉と言えば、私が勤めていたデイサービスでは、車で30分ばかり離れた市の温泉センターに、外出レクで出かけたことがある。1週間を温泉ウイークとし、希望される全ての利用者さんをお連れした。
そこは介護用の貸し切り浴室があったので、そこで入っていただいたのである。他のお客さんはいないのでのんびり入れる半面、温泉の雰囲気はあまり感じられなかったかもしれない。しかし利用者さんたちはもう何年も温泉になんて来たことがないという方が多く、大変喜ばれた。

ところで、デイサービスで温泉に出かけるなどということをしても良いものなのか。
ワムネットのQ&Aにはこうある。

【Q】指定通所介護事業所において、利用者を対象に当該事業所外(温泉施設等)に日帰りの小旅行を行った場合は、そのサービス提供に係る行事の一環として行った場合でも、当該事業所内におけるサービスには当たらないため、所定の通所介護費は算定できないものと考えてよいか。また、リハビリを兼ねて近隣の公園等へ散歩するなどのレクリエーションを行った場合においては、算定は可能か。
【A】貴見のとおり。基本的に介護保険における通所介護は通所介護事業所内で行われるものである。近隣における機能訓練の範囲としてのレクリエーションは年間事業計画に位置づけられているものであれば介護保険として行うことは可能であろうが、事例のような特別な行事の場合は、保険外サービスとされたい。

【Q】通所介護事業所の外での入浴(日帰り温泉等)で利用者の入浴を行なった場合、入浴介助加算の算定を行なうことができるか。
【A】算定できない。基本的に通所介護事業は通所介護事業所内で行われるものついて評価するものである。日帰り温泉等を利用すること自体、介護保険事業として馴染むか否か、通所介護計画上どのように位置づけられているのか検証する必要があろう。

このため、昼食後に、日帰りの小旅行とは言えないであろう2時間程度で行って来ることとし、計画上にもしっかりと盛り込んでおいた。
「自宅での入浴が安全にでき、またかつてのように友人や家族と大好きな温泉にも行けるようになるため、普段入っているデイサービスの浴室と違った環境でも入浴する機会を持ち、身体機能と危険性を評価する」
「入浴が嫌い(もしくは面倒)であるため、楽しみを兼ねて温泉に出かけることで、入浴の心地良さを感じてもらうきっかけとする」
などと、それぞれの方に合った内容を計画に入れたわけだ。

こうして温泉に出かけた日も介護給付を受けた。ただし、当然入浴加算は算定せず。

ただ、これが介護保険事業として適正であると本当に思っているのかと言われると、言葉に詰まってしまうことは確かだ。
しかし、ああいった外出では、普段のデイサービスの建物内では決して見られないような笑顔を見せてくださる方がいたことを思い出すと、費用以上の効果があったのかもしれないとも思う。

出かける前、午前中にはきちんと通常通りの機能訓練も行い、デイサービスとしてやるべきことはきちんとやっている。
もしその日は温泉になど出かけなかったとしたら、その方はデイルームでいつものようにレクに参加していただろう。つまり、その日の介護給付費は温泉に行けなかったとしてもかかっている費用である。さらに、当たり前だが、外出を企画し実施するのは職員にとっても大変なのである。それを、喜んでほしいという一念で企画し実施したわけだ。

コンプライアンスはもちろん疎かにしてはならないが、それにがんじがらめに縛られてしまっては、介護サービスは型に嵌められたつまらないものになってしまうのではないだろうか。

朝の挨拶

以前に勤めていたデイサービスでは、毎日のサービスの開始時に、職員が利用者さんの前で少し話をしていた。

「今日、○月○日は○○の日です。これは……」

「○○で○○という行事が行われていますね。行かれたことはありますか?」

「そろそろ畑では○○の収穫時期ですが、○○を使った料理というと……」

など、ちょっとしたことを話すだけだったのだが、これが毎日、結構なプレッシャーだったのを思い出す。話題は、新聞や郷土史の本、ネットなどで情報収集した。

そもそも難聴や認知症の利用者さんも少なくない中で、なぜこのようなことをしていたのかというと、少しでも社会や季節への関心を持ち続けて欲しいと思っていたからである。

思えばこれが、人前で話す訓練になったと思う。今でも決して人前で話すのは得意ではないが、多少はマシになったのではないか。
これは、介護職員は一度デイサービスで勤めると鍛えられる、という私の考えの一部をなしているのだった。

要支援の方の通所サービス利用回数

要支援の方は、利用料金が利用回数ではなく、各サービスごとに月いくらと決まっている。
そこで利用者さん側としては数多く利用した方が得になり、逆に事業所側としては少ない方がありがたいということになる。

平成18年4月改定関係Q&Aにはこうある。

Q.介護予防通所系サービスを受けるに当たって、利用回数、利用時間の限度や標準利用回数は定められるのか。

A.地域包括支援センターが利用者の心身の状況、その置かれている環境、希望等を勘案して行う介護予防ケアマネジメントを踏まえ、事業者と利用者の契約により、適切な利用回数、利用時間の設定が行われるものと考えており、国において一律に上限や標準利用回数を定めることは考えていない。なお、現行の利用実態や介護予防に関する研究班マニュアル等を踏まえると、要支援1については週1回程度、要支援2については週2回程度の利用が想定されることも、一つの参考となるのではないかと考える。

多くの事業所が、要支援1では週1回、要支援2では週2回までと決めていて、中には、それを上回る場合は料金を自費でいただくとしているところもある。
もちろん、どんな場合でも一律にこのような対応とするのは不適切なのだが、それを外部から指摘されて問題となった例を知らない。黙認されているのである。

とはいえ。
ケアマネもしくは事業者が、「この方は週1回が適当だろう」と評価したにもかかわらず、ご本人さん・ご家族さんがそれを上回る利用を希望された場合には、本来必要のないサービスを提供していることになるため、介護保険給付外での自費利用とすることは、介護保険制度の理念に照らしても間違ってはいないと思う。
また、上記のQ&Aに「介護予防ケアマネジメントを踏まえ、事業者と利用者の契約により、適切な利用回数、利用時間の設定が行われるものと考えており」とあることは、利用回数を決めるのはあくまで事業者と利用者の契約であって、ケアマネの意見は考慮されるべきではあるが絶対ではないということになる。

ということで。
私がデイサービスの管理者をしていた時には、ケアマネさんから「要支援1の方ですが、週2回使えますか?」というお問い合わせがあった時には、「その方にとって週1回でなく、2回以上の利用が望ましい理由がケアプランの中で位置付けられているなら、私たちも前向きに検討させていただきます」などと答えていた。
間違ってはいない。が、我ながらかなり意地悪と言うか、性格の悪い対応だと思う。
よくもまあこれでケアマネさんたちからの紹介がなくならなかったものだ。私の同僚が本当によくやっていてくれたからだろう。

私たちの事業所では、要支援1でも更新時に2から下がってしまった方などには、週2回の利用をしていただくこともあった。
心身の機能回復に合わせての介護度の変化ならともかく、そうでないなら、介護度という単なる数字の変化によってその方が利用できるサービスが制限されるのは不当であり、そんなものに屈したくないという思いがあったのだ。

それはささやかな抵抗であり、誰にも届かないメッセージでもあった。