竣工式/落成式

うちの法人の新しい事業所が完成した。
ハコとしてはこれまでで最大である。

うちの法人は竣工式や落成式をしない。これは文句を言っているのではなく、むしろありがたいと思っているのである。

建物が完成し、無事指定が下りたら、竣工式や落成式をするのが普通だろう。介護事業所の場合、地域の方、協力医療機関、それに設計事務所や建設会社、設備会社といった、施設を建てるのに関わった業者などが招かれる。

内容は、来賓の祝辞、経営者の挨拶、スタッフ紹介、食事をしながらの歓談といったところ。スタッフはもちろん招待される側ではなくする側なので、ウェイター/ウェイトレスに近い働きが求められることが多い。
私もこれまでに、お手伝いも含め何回か関わったことがある。決して楽しい時間と呼べるようなものではない。当たり前だが。

まあ、それでも施設のお披露目になるだろうし、日本人は縁起を担ぎたがるものだ。
また施設を運営していくにあたって、ぜひとも押さえておきたい人を一度招いておくには、内覧会よりもいい機会である。

地域の方やケアマネさん、そして入所希望者さん向けの内覧会は、来月早々に行われる予定。私もお手伝いに行くことになっているのだった。

さて、どんな建物ができたのか。見るのが楽しみだ。

介護事業と労働問題

市の地域密着型サービス事業者研修会があった。

これは要するに集団指導なので、基準や算定要件の再確認だったり、制度改正の説明だったりすることが多いのだが、今回は少し違っていた。労働関係法令の遵守についてと、先だってのグループホーム火災を受け、防災についてである。

言うまでもないが、介護業界では労働関係についてはコンプライアンスなどない。
実際、時間外手当を正しく支給し、有給の取得を認めなければならなくなるとしたら、経営が立ち行かなくなる事業所は相当数に上るだろう。現在の介護事業は、従業員の奉仕によって成り立っているのである。
そして、そのことに不満を漏らせば、「あいつは金のことばかりだ」と思われる。

実際、労働局もこうした介護事業所の実情は知っているだろう。それでいて、厳しく取り締まろうとはしない。
それを責めるつもりはない。おそらく、急激すぎる変化は、それによって誰も得をしない結果となる。

ただ、滑稽で、哀しいなと思った。

私は、個人的には勤務時間中の休憩も、有給も普通に取れるようになりたいとは思わない。介護の仕事を始めてからというもの、どちらもまともに取れたことなどないし、その分は基本給に込みだと言われても仕方がないかなと思っている。
しかしすべての職員に私と同じ考えを強いるわけにはいかない。これからは、そういったことをきちんとしなければ、職員は定着しないのではないかと思った。

辞める時に、会社への不満を正直に全て語っていく者は少ない。自分が辞めた後で改善されても何の意味もないから。
管理職の耳に入らないからと言って、不満がないとは限らないのだ。

ま、うちはそれでも介護職員のサービス残業が少ないだけましな方だと思うけれど。
昇給がないのは厳しいな……

介護労働環境向上奨励金

厚生労働省は、介護労働者の労働環境の向上を図った事業主に対しての助成金制度を設けている。介護労働環境向上奨励金(4月からは中小企業労働環境向上助成金)である。

これは、介護福祉機器等助成と雇用管理制度等助成からなる。
前者は、介護労働者の身体的負担軽減のため介護機器を導入した場合にその費用の1/2(上限300万円)が支給されるもので、後者は処遇向上、労働条件や職場環境の改善などを総合的に進めることにより、一定の効果が得られた場合にその費用の1/2(上限100万円)が支給されるものだ。
手続きとしては、「雇用管理制度整備等計画」を作成し、都道府県労働局に申請する。

この雇用管理制度等助成を、うちの会社も申請するらしい(らしいというのは、はっきりと聞いたわけではないからだ)。

対象には、例えば増員のための広告費や教育訓練なども含まれる。うちの会社も時々求人広告を出し、CS研修を行っていたりもするのだから、もらえるものはもらっておくべきだ。

ところで、この助成金の支給条件の1つに、「導入・運用計画、または雇用管理制度整備等計画の提出日の6ヵ月前から、事業主都合で労働者を解雇(退職勧奨による離職を含む)していないこと」というものがある。
この人手不足のご時世、介護事業所が解雇したいというのはよほどのことだと言っていいだろう。この条項は人員整理を行っていないことを求めているのだろうから、「解雇していない」ではなく「従業者数が減少していない」などとすべきではないのか。

実はうちの施設が、これのおかげで現在えらい目にあっていたりするのだ。
経歴を詐称し、何十日と欠勤するような者であっても、会社から「辞めろ」といえば解雇になってしまう。

法で労働者を守る必要があるのは当然である。
しかし真に守られるべきは、怠惰な人間の雇用ではなく、普通に働いている労働者の権利(時間外手当や有給休暇など)ではないのだろうか?

リート

我が家が投資信託を始めて数カ月が経った。
たまたま始めた時期が良かったらしく、アベノミクス効果のおかげで(?)、現在トータルで10%程度の利回りになっている。
リスクを分散するために投資対象の違うファンドを組み合わせている(いわゆるポートフォリオを組んでいる)のだが、迷った挙句に見送った投資対象がある。REIT(Real Estate Investment Trust)つまり不動産投資信託である。これは不動産に投資し、そこで得られる賃料を利益として分配するものだ。

見送った理由は、運用成績を見るとどうもパッとせず、国内にしろ海外にしろ、今後不動産が目覚ましく成長していくことはなさそうだな、と判断したからである。結果としてはこれが外れた。目をつけていたREITの運用成績を見ると、基準価額が当時から3,000円以上も上がっているではないか……こんなことなら全く上がらない日本国債を止めて、その分をREITにしておけばよかった……

まあ、欲張っても仕方がない。

さて、こんなニュースを見た。

【提言】ヘルスケアREIT創設に向け論点整理、国交省
http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20130307/342808/

高齢者向けの住宅や有料老人ホーム、病院などのヘルスケア施設について、供給促進のための不動産証券化手法を検討する国土交通省の委員会は3月6日、課題や方向性をまとめた報告書案を発表。ヘルスケア施設を投資対象としたREIT(不動産投資信託)創設のメリットとして、資金調達が多様化することや、利用者にとって質の高い施設の供給につながる可能性があることを記した。

私は経営にも経済にも明るくはないので、なぜ高齢者施設や病院を対象としたREITが始まると、「利用者にとって質の高い施設の供給につながる」のか、記事を読んでもよく分からなかった。
どうやら、投資対象として相応しいかどうかの厳しいチェックが入ることとなるので、経営を安定させられるだけの良いサービスを提供することが求められ、それは何より利用者にとって望ましいということなのではないかと想像するが……違うかな?

だとしても、そんなにうまくいくかねえ、と思った。
投資対象をチェックすると言っても、介護業界によほど詳しくなければ、その事業所の先行きを見極めることは難しいだろう。結局は大手事業者が資金調達に利用するものの、思っていたようには経営が安定せず、やがて追い打ちをかけるように違法行為が発覚して沈没、というのがオチのように思えてならない。

もし、従来は資金調達が難しかった野心的な介護業界人が、独立して自ら介護事業を経営するきっかけになれば面白いとは思う。が、いずれにしろ現状では無理だ。
確かに高齢者が安心して暮らせる住まいへのニーズは高く、国も積極的に進めようとしているが、なにしろ従事者がいないのだから、箱ばかり作ったところで良いサービスなど提供できるはずもない。

働く者がいないところで何をしようと、うまくいくわけがない。

3つの立場

これは、私が最初の職場を辞める頃、つまり6年ほど前から感じていることなのだが。
介護施設では、3つの視点が大切だと思う。

1つ目は事業の継続を念頭に、経営の安定や労働環境の改善を考えること。これは管理者の役割。

2つ目は利用者の希望の実現を念頭に、利用者の生活環境の改善を考えること。これは現場職員の役割。

3つ目は第三者的な立場から両者の調整を図ること。これはケアマネの役割。

相談員は? と言われそうだが、私は、相談員は現場職員と同じように利用者の利益を考える立場にあると思っている(エントリ「相談員と施設ケアマネ」参照)。

そして、それぞれの職員がそれぞれの立場から意見を挙げ、議論することがサービスを良くしていくと思う。
それぞれの職種が、本来考えるべきこと以外のことに頭を悩まされている状態は、健全なものとは言えないのではないか。
例えば、管理者が直接利用者の希望の実現に尽力せざるを得なかったり、現場職員が労働環境に不満を感じていたり、ケアマネが施設もしくは利用者のいずれかの視点に偏ったり。

これを解消するには、管理者はとにかく労働者が雇用条件などに不満を抱かぬよう尽力し、現場職員は自らサービスの改善に取り組んでいくことが必要だと思う。それにより、互いに本分を全うできるのではないだろうか。