椅子による拘束

エントリ「横着の正当化」で書いた、食堂で車椅子から普通の椅子に座り替えていただくと立ち上がってしまうことがあるという理由から、職員によって車椅子に座ったままにされがちな方について。

一般的に車椅子の座面は前が高く、後ろが低い。これはおそらく移動中にずり落ちたりしないようにという安全面を考慮してのことだろう。しかしこのために、立ち上がりはしにくくなってしまう。
立ち上がることを防ぐため、食堂で車椅子から普通の椅子に座り替えてもらわないのは、厚生労働省の『身体拘束ゼロへの手引き』で挙げられている身体拘束の例⑦「立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する」に該当する。見た目は何一つ拘束していなくとも、その目的としては立派な拘束である。

私が現場に入った時には、その方には必ず食堂で普通の椅子に座り替えてもらっているが、その理由は3つある。
1. 立ち上がろうとすることも、その方が今何を考えているかを知る一助になるから
2. 立ち上がりを妨げることは身体拘束に該当するから
3. その方の担当が、座り替えてもらうようにと指示しているから
である。

ところで今日、その方が塗り絵に集中して取り組まれている時に、私はその間に別の入居者さんのオムツ交換を済ませてしまおうと考えた。そこで、万一のためにと思い、その方の椅子の後ろにもう一つ椅子を置いて、もしその方が立ち上がろうとしても、椅子が後方に動かせないようにした。うちの施設は、1フロアにつき早番と遅番が一人ずつなので、フロアに1人しか職員がいなくなってしまう時間帯があるのだ。
これを見た看護師から、それは良くないと指摘された。その場を離れるならば、他のスタッフに見守りを依頼すればいいだけの話ではないかと。

その言い分はもちろん分かる。
それに、拘束を避けようとして車椅子から普通の椅子に座り替えてもらっていても、結局立ち上がれないようにと拘束してしまうのでは意味がない。
それに見た目も悪い。

しかし、私は実際に立ち上がろうとされている時に、立ち上がれないようにしたわけではない。その方がせっかく活動に集中して取り組まれているのに、それを中断させて車椅子に移乗していただき、他スタッフのところへお連れするのは忍びない。職員の都合で入居者さんを動かすことに他ならない。
また各フロアに職員が1人ずつしかいない状態では、食堂から離れる際にいちいち隣のフロアから、持ち場を離れてこちらに来てもらうというのも実際には難しい。一日に一度や二度では済まないからだ。

だから私は、看護師の指摘は第三者的な視点からは正しいと思うけれども、少しも反省はしていないのだった。

よく施設では、目の離せない方がスタッフステーションに連れて来られているところを目にする。また職員がナースコールで呼ばれるなどして訪室する際に、目の離せない方を目的の部屋の前までお連れし、そこで待っていてもらうことも。
身体の動きを物理的に制限するよりは、遥かにましな対応なのだろうと思う。だがそうやって職員の都合のみで動かすのでは、本末転倒になる場合もあるように感じている。

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