【書評】杉山孝博監修 『認知症・アルツハイマー病 介護・ケアに役立つ実例集』

先日レビューした『認知症「不可解な行動」には理由がある』に続き、これも一般の方向けに書かれた本。
監修されている方は医師で、長らく認知症の方の治療と、そして介護者の方々と関わってきた経歴を持っている。
実際に執筆した方の名前は、少なくとも電子書籍版には記されていない。

事例を元にした周辺症状への対応方法だけでなく、様々な状況での認知症介護へのアドバイスが書かれており、一般の方には参考になるだろう。成年後見制度などについても分かりやすく説明されている。
事例は、何人ものモデルを組み合わせているらしいが、それだけに作り物感が漂ってしまっているのが少々残念。

中身は、ごく当たり前のことを書いているように見えるが、それは私自身の経験に照らし合わせて納得できるという意味でもあり、ご家族さんが最初に読む本としては手頃で良いだろう。
前に書評を書いた『認知症「不可解な行動」には理由がある』は、「こういう症状に対してはこうすべき」ということが理詰めで書かれていたが、こちらはもっと力を抜いた印象で、介護者にとっても気軽に読めるのではないか。

ただ、例えばオムツ外しへの対処法として、ポータブルトイレを置くなどして夜中に2時間おきに誘導という例があるが、施設ならともかく、自宅では介護者がもたないだろう。これを解決策とするのはいかがなものか。

また、対応方法として、嘘や騙しが満載。私はエントリ「やさしい嘘」「騙したりはぐらかしたりすることについて、改めて」「否定と騙し、はぐらかし」などで書いているように、それを否定するものではないが、一応触れておく。

さて、最後に、監修者である杉山先生の、「認知症をよく理解するための8大法則」「介護に関する1原則」「上手な介護の12カ条」を書いておこう。

<認知症をよく理解するための8大法則>
 第1法則:記憶障害に関する法則
 ①新しいことが覚えられない「記銘力の低下」
 ②経験そのものを忘れる「全体記憶の障害」
 ③現在から過去に遡って忘れていく「記憶の逆行性喪失」

 第2法則:症状の出現強度に関する法則
 相手が身近な人であればあるほど症状が強く出る

 第3法則:自己有利の法則
 自分に不利なことは認めない

 第4法則:まだら症状の法則
 しっかりした部分とおかしな部分が入り混じる

 第5法則:感情残像の法則
 記憶はなくしても感情は残る

 第6法則:こだわりの法則
 ひとつのことにこだわり続ける。無理にやめさせようとすると、逆にこだわりを強めてしまう

 第7法則:認知症症状の了解可能性に関する法則
 理解不能に見える認知症の症状のほとんどは、認知症の人の立場に立ってみると理解できる

 第8法則:衰弱の進行に関する法則
 認知症の人の老化のスピードは、普通の人の約2~3倍の速度で進む

<介護に関する1原則>
 認知症の人が形成している世界を理解し、大切にする。そして、その世界と現実とのギャップをできるだけ感じさせないようにする
<上手な介護の12カ条>
 1 知は力なり、よく知ろう
 2 割り切り上手は、介護上手
 3 演技を楽しもう
 4 過去にこだわらないで、現在を認めよう
 5 気負いは、負け
 6 囲うより開けるが勝ち
 7 仲間を見つけて、心軽く
 8 ほっと一息、気は軽く
 9 借りる手は、多いほど楽
 10 ペースは合わせるもの
 11 相手の立場でものを考えよう
 12 自分の健康管理にも気をつける

ところでこの本、iTunes Storeの電子書籍版では「ゲイ」のカテゴリに入っていたりするのだった。どういうミスだ……

(評価:★★★☆☆)


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