特養をセーフティネットにするために

参院選が公示された。
各党とも、公約で介護職員の処遇改善を挙げているが、さて。

また、特別養護老人ホーム(特養)の増設を挙げている党もある。実のところ、私はその案にはあまり賛成できない。
現在の状態で特養の数を増やしても、本当に必要とする方がすぐに入所できるようになるとは思えないからだ。安価な有料老人ホームやお泊まりデイからの移動と、そして本来なら在宅生活を継続できる方が多量になだれ込んで来て終了、だろう。

「施設入所が必要な状態になったらすぐに入れる」という安心感は、施設の数を増やしたところで得られるものではない。
そして、まずこの安心感を確保することができれば、在宅でのサービスはいくらでも改善の余地がある。介護保険制度は、まずここから改革の手を付けるべきだ。

どうすればいいか。
私は、従来型特養は措置施設に戻されるべきだと思う。

従来型の、多床室を中心とする特養は、現在は「新型特養や有料老人ホームに入れない方が仕方なく選択する施設」になっている。好んで特養を希望される方は、いないとまでは言わないが少数だろう。
その理由は、個室でなく多床室だからとか、サービスがどうこうとかいう問題以前に、従来型特養は待機者が多過ぎるからである。金銭的に余裕のある人は、すぐに入れる新型特養や有料老人ホームを選択する。

これだけ待機者が多いと、従来型の特養は、経済的・社会的に困窮している方を救うためのセーフティネットたり得ない。ならばいっそ措置施設とし、行政あるいはその代理者が、客観的に必要性を判断し、入所を決めるようにすべきではないか。どうせ現在も、入所判定の基準は自治体から示されているのだ。それに厳密に従うことは、措置と大して変わらない。
ただし今の行政に措置業務を行う力はないだろうから、地域包括支援センターの業務とするのが適当か。ただしそれでは公正な運用ができない可能性もあると思うので、もっと良い方法があるかもしれない。

介護者さんたちが「本当にどうしようもなくなったら施設に入れてもらう。それまではできる限り在宅で頑張る」と思うことができれば、今よりも在宅で暮らせる人は増えるだろう。いざという時になってから動いても遅いと皆が分かっているからこそ、特養の申込者数はどこも3桁になってしまっているのだ。

どうにも在宅生活を続けられなくなったら、必ず特養に入ることができる。ただし、より快適で安全な環境を求めるという意味で施設入所を希望するのなら、費用は高くなるが、新型特養や有料老人ホームに入れば良い。
経済的に余裕のない方はそうもいかないが、それも仕方がない。それが高度成長期からずっと日本を支えてきた資本主義というものだ。要介護高齢者が増えてきたからと言って、いきなり福祉国家になることなどできるはずもない。消費税を10%に上げるだけで大騒ぎだというのに。

とにかく、何よりも真っ先に制度が保証しなければならないのは、「安心」である。その上で、あとは福祉をどの程度充実させ、そのためには国民の負担をどの程度まで上げなければならないのかは、国民全体で議論して決めれば良い。

ついでに言えば、私は介護老人保健施設(老健)も廃止しても良いと思っている。
本来の役割を果たしている老健は、全くないとは言わないまでも非常に少ない。老健が在宅復帰を支援できない理由は、エントリ「老健は在宅復帰を支援できない」で書いたとおりである。今はむしろ、逆に在宅生活に戻れない方をどんどん増やしている。
もちろん、廃止後は、既存の老健は特養や特定施設(介護付有料老人ホーム)などに転換する。あるいは、リハビリ機能を今よりも遥かに強化した、利用期間に制限のあるリハビリ施設というのもいいかもしれない。

要支援の方を介護給付から外す前に、やるべきことがあるのではないかと思うのだ。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中