機器の進歩と介護

昨日はやはり、多忙と酔いとでブログ更新どころではなくなってしまった。今日からまた気持ちを切り替えていこう。

さて、うちの法人の新しい事業所(介護付有料老人ホーム)を見てきた。

新しい施設には新しい機器が使われているものだ。それらは我々の目から見ると羨ましいものであるが、利用者さんの目線からは果たしてどうなのだろうと思った。

まずは居室の照明。
壁のスイッチは入り口脇と、ナースコールのコネクタ近くの計2箇所。またリモコンがあり、光の色が白色から暖色まで微妙な調節が可能なほか、オフタイマー機能もある。代わりに、昔ながらの紐がぶら下がった本体のスイッチはない。
言うまでもなく、一般的にはリモコンがあると便利である。しかし高齢者、とりわけ認知症の方にはどうだろうか。まして機能が豊富になればなるほど、リモコンは使いにくくなりはしないか。私が以前勤めていた住宅型有料老人ホームでもリモコン操作のできる照明が付けられていたが、リモコンを操作していた入居者さんはほとんどいなかった。

また、ナースコールのコネクタ近くのスイッチは、ベッドから出ずに操作できるようにという配慮なのだろうが、そんなのは部屋の模様替えをすれば無駄になってしまう。家具をうまく配置するなど、環境整備によって自立を支援するには却って支障になりかねない。

結局はスイッチの紐を延長し、ベッドの柵などにくくりつけておくのが、一番高齢者にとっては便利なのである。部屋の灯りをつけたり消したりするのも、些細なことではあるが、生活の中での自己決定である。認知症が進行しても、自分でできることは少しでもさせてあげたい。それを、使いにくいリモコンにしてしまっては……

また介護用ベッドも気になった。
まず長さが短い。正確に測ったわけではないので目見当だが、最低の180cmではなかったろうか。これでは背の高い男性の入居者さんでは短く感じるし、ましてやこれからの高齢者世代にとっては言わずもがなだろう。
それに何よりも幅が狭かった。これも目見当だが、83cmだと思う。居宅のケアマネさんや介護用品の販売・貸与事業所の方なら当然ご存知だろうが、介護用のベッドの幅は83cm、91cm、100cmと主に3段階に分けられる。100cmあれば、狭いとは感じない(私の自宅のベッドも100cmである)。しかしこれが83cmとなると、寝返りを打つのも怖いくらいだ。また両側に柵をすると閉塞感を覚える。機会があれば試しに横になってみることをお勧めする。
もちろん、ベッドが小さければその分だけ部屋の空間を広く使えるし、介護もしやすい。しかし自宅の寝室に入れるというならともかく、施設で小さなベッドを使う必然性はさほどあるまい。うちの施設では91cmなので、せめて同サイズにして欲しかった。

大きいベッドはその分高価になるので、それを避けたのだろうか? しかしそれならば、3モーターのベッドにしなければ良かったのではないか。
3モーターのベッドは、頭側を上げる、足側を上げる、ベッド全体の高さを変える、という3つの部分それぞれに独立したモーターが使われている。もちろんこれは利用する方のためにはいいのだが、その機能が充分に生かされるためには、扱う職員に知識と配慮が必要である。
うちの施設でも3モーターのベッドが入れられているが、例えば足がむくんでいる入居者さんに、足側だけを上げるという使い方をする職員はほとんどいない。せいぜいが、栄養剤の注入時に、頭側を上げる時に少しでも体がずり落ちにくいようにと足側も一緒に上げる、という程度だ。これならば、2モーターのベッドで可能なのである。
もしも足側だけを高くしてあげようと思えば、足の下にクッションを入れるなどすることもできる。肝心なのは、ベッドの機能でなく介護者の心配りなのだ。

また、ベッド柵もどうかと思った。立ち上がる時に支えにしやすいよう、柵の中ほどから折れ曲がり、ベッド側面と直角にすることができるいわゆるL字バーなのだが、曲げるにはボタンを押して可動部分を持ち上げる必要があるものだった。
これも、扱いに慣れた職員にとっては片手で操作できるので便利だが、入居者さんが自分で動かずには扱いにくいと思うし、持ち上げた部分と基部の間に指を挟む危険すらある。
これはむしろ、介護者が望まない時に要介護高齢者自身が自由に操作してしまうことを防ぐ、いわば身体拘束的意図をもって設計されているとしか思えない。なぜこんなものを選んでしまったのだろうか。

たぶん、照明やベッドの選定にうちの介護事業部の人間は関わっていないのだろう。介護事業部門責任者は多忙であるから、彼女の目から漏れる形で選定されてしまったのではないか。

まあ、結局のところは、肝心なのはハードでなくソフトである。職員が、少しでも入居者さんが楽に使え、心地良く使えるように配慮できれば、それでカバーできるはずだ。
そういう職員が育っていくことを願っている。

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