とあるご夫婦

うちの施設に入居されている夫婦が、一組増えた。
元々奥さんが他所のグループホームに入居されていて、その後旦那さんがうちの施設に入居された。そうしてしばらく別々に暮らされていたのだが、この度、奥さんがうちの施設に移って来られたのである。

夫婦というのは、どんな方々であっても、常に一緒にいるのがベストとは限らないように思える。一方がもう一方を気にかけ過ぎ、疲弊されているのを見たりすると(えてしてご主人が認知症で、奥さんが比較的しっかりしていて世話を焼くことが多い)、もっとご自分のペースでご自身の生活を楽しんでくれればいいのにと、可哀想に思う。

さて、冒頭で紹介したご夫婦について。
奥さんには認知症があり、家に帰りたいという訴えが強く、グループホームでは当初苦労したらしい。窓から出られてしまったこともあったとかなかったとか。
現在では車椅子を使われているが、歩けなくなるような疾患はないので、これは薬で鎮静がかかっているというのと、おそらく向精神薬の副作用により、立って歩くのも難儀だろうなと思えるほどに太っているためだろう。

先日、こんなことがあった。
奥さんが私の介助でトイレに行かれたあと、食堂でリハビリパンツに手を入れていた。私のパッドの当て方が良くなかったのかもしれない。
ご主人さんはそれを見て、「腹痛いのか?」と心配し始めた。私が奥さんに確認し、そうではないことをご主人さん(強い難聴である)に伝えても納得されなかった。「どうして、あんたが何でもないって決めつけるんだ。苦しいのは本人なんだ」とのこと。いや、それはそうなんだけど。
そして奥さんに直接「腹痛いのか?」と聞かれる。奥さんはしつこく尋ねられて面倒になったのか、「そう!」と返答。ご主人さんが「ほら、痛いって言ってるぞ! 医者に診せてやってくれ」となった。
ご主人さんにも認知症があり、奥さんの認知症状は理解できない。

そこでやむなく、しばらくお二人を離すことにした。奥さんを食堂から談話スペースへ移動し、「お腹は痛くないですか? トイレに行きませんか?」と再度確認した上で、窓の外の景色を眺めながら少しお話しした。
しばらくして奥さんに食堂へ戻っていただくと、ご主人は再び「腹痛いか?」と尋ねられた。しかし奥さんの返答が「どこも痛くないよ」だったおかげで、私は逆にご主人さんから、「あんたのおかげで母ちゃん良くなった。ありがとう!」と、私は何もしていないのに、激しく感謝された。

その後ご夫婦は寄り添って手を握り合っており、そういうお姿を見ていると、ああやっぱり一緒に暮らせるようになって良かったなと思った。

ご夫婦を一緒に住まわせたいと希望していた息子さんから、私たちは感謝の言葉をいただいたが、少なくとも私に関しては何もしていない。居室が空いていないかと尋ねられ、空いていますよとお答えした時に、奥さんをうちの施設へ移したいという希望をお聞きして、簡単に手順を説明しただけである。
むしろ、「もしも奥さんが移ってきて、お互いに、また周囲の入居者さんたちに悪影響があった場合は、グループホームに戻っていただくことをお勧めすることがあるかもしれない」というこちらの勝手な提案を、受け容れてくれた先方の施設の好意に感謝すべきだろう。

これからお二人がどうなっていくかはわからないが、見守っていきたいと思う。

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