人形療法

ふなっしー、というゆるキャラをご存じだろうか。

千葉県船橋市の非公認ご当地キャラで、どこの団体でもない、一個人が勝手に始めたものだ。当初はどこからも相手にされていなかったのだが、Twitter等を通してじわじわと人気を集め、少しずつイベントへの参加が認められ、テレビで報道されることもしばしば。アサヒ十六茶のCMでは新垣結衣と共演している。

うちの奥さんが、ふなっしーをいたくお気に入りで、どうしても見たいと言うので参加イベントへ見に行ったことがある。テレビで見た通り、奇声を発しながら激しい動きをしていた。それは明らかにゆるキャラの「可愛さ」ではなく、狂気の発する魅力だろう。人がムンクの「叫び」を高く評価するのと同じだ。

それにしてもゆるキャラは大隆盛である。2010年からはゆるキャラグランプリが開催され、熊本のくまモンの経済効果は200億円を超えているとされている。
なぜゆるキャラがここまで人気となっているのか。

ゆるキャラは、命名者のみうらじゅん氏による定義の中に、着ぐるみ化されていることという条件が挙げられている。ポイントはここにあるのではないか。
つまり、ゆるキャラは視覚的な刺激だけでなく、視覚を通して、触覚にも訴えかけているのではないかと思うのだ。子供が縫いぐるみに特別な愛着を持つように。

さて、そこで今日の話題。
ドールセラピー、すなわち人形療法というものがある。まずは英国の記事を一つご紹介。

Care homes use ‘doll therapy’ for residents with dementia
http://www.guardian.co.uk/social-care-network/2013/apr/29/care-homes-doll-therapy-dementia

イギリスで、認知症の方への人形療法を導入する老人ホームが増えてきているという。
当初は、「幼稚だ」「押しつけがましい」などの反感が多かったらしい。しかしいざ導入されると、確かに効果が感じられ、抵抗もなくなってきたという。

なぜ人形を抱くことが、認知症状の緩和につながるのか。記事では、人形との関係が親子関係を想起させることが一例として挙げられている。ただし、子供がいない方にでも効果があるようなので、それが全てということもないだろう。

「人形療法」でググってみる。滋賀県立大学の畑野准教授という方が研究され、論文もいくつか発表されているようだ。残念ながらネット上で読めるものは見つからなかったので、内容ははっきりしない。

私の人形療法に対する仮説はこうである。

1. 人形は子供や動物と同じように、「(自分よりも)弱い」者として、守ろうという本能を刺激するため、可愛いものと認識される。可愛いものを見るのは快いので、認知症の不安を和らげる。
エントリ「I love you」で書いたようなことだ。

2. 人形は触覚を刺激する。触覚は人間にとって最初に世界を認識する手段であり(何しろ新生児は目が開いていない)、乳児は主に触覚によって母親との関係を築き、安心感を得る。
人形への接触は、乳児期、母親の温かい感触に心地良さを覚えていた頃への退行である。

3. 認知症になると対人関係の維持構築が難しくなる。エントリ「タクティールケアと対人関係論」「周辺症状は対人関係の障害から現れる」で書いたように、周辺症状は対人関係の障害から生じるが、人形を可愛がることは疑似的な対人関係となるため、症状を軽減する。

人形が全ての認知症の方に良い効果を及ぼすということはないと思うが、人形を抱えていることが、明らかに精神状態の安定に一役買っていると思われる方にはこれまでにお会いしたことがある。
私の印象としては、人形が良い効果を及ぼすのは、不安が焦燥感を生み、帰宅願望や多動が現れている女性のアルツハイマー型認知症の方などである。こうした方には試してみるのも良いのではないかと思う。

ところで今日のエントリ、ふなっしーから人形療法というのはいくらなんでも無理がある……というのは自分でも気づいているので、スルーしていただくよう願う。

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