介護はサービス業か

下野隆祥さんの『世界一のサービス』の電子書籍版を購入し、読書中。
さすが一流の人は違うなあと思いながら、サービスと介護について考えている。

介護は形のないものを提供して対価を受け取っているという意味においては、紛れもなくサービス業である。「介護サービス」という言葉に違和感を感じている人はほとんどいないのではないか。

これは決して悪いことではない。介護を、施政者からの一方的な「施し」から、事業者と利用者との対等な関係に引き上げた結果だと言うことができるからだ。

さて、介護を他のサービス業と比較する人がいる。例えば、他のサービス業、飲食業などを引き合いに出し、そうした業界では客に尊敬語ないし丁寧語で話すのが当然であるから、介護も利用者さんに敬語で話すのが当然、というように。

なるほど。
ということは、その方は利用者さんに対しての呼び方も、「さん」付けではなく、「様」付けなのだろう。飲食業がそうである以上、そうしていなければ矛盾する。自分の主張にとって都合のいいところだけ見ていることになってしまう。
現代の日本において、サービス業では客に「様」を付けるのが当たり前なのだから、介護業界でもそうすべきというのは間違っているとは言えない。賛同はしないが、そういう考え方もあって良いだろう。

私は、エントリ「お客様は神様か」でも書いたが、そもそもサービス業全般で、客に「様」付けで敬語を使うことの方がどうかしていると思っている。全ての業種で、店と客とは対等の立場で良いのだと。

介護業界で利用者さんに丁寧語を使わなければならないのは、利用者さんは自分よりも遥かに年長者であるからだと、私はこの仕事を初めた頃にそう教わった。
その方が個人的には納得がいく。日本人にとって、儒教主義の方が、「お客様は神様です」よりも歴史が長い。

なぜ日本は、サービス業だけでなく、第一次産業や第二次産業においても、売り手よりも買い手の方が上であるかのような社会になっているのだろうか。
この理由は、大きく分けて3つあると思う。一つ目は、「お客様は神様です」という言葉のため。二つ目は士農工商つまり商人は低い身分とされたことの名残。三つ目は、ホテルやレストラン業からの広汎化である。

ホテルやレストラン業は、西欧、特にイギリスの影響を受けた。イギリスは階級社会であり、今も貴族の称号を持っている人がたくさんいる。そしてそうした階級が利用するホテルやレストランは、庶民が利用するものとははっきり分かれている。
顧客が貴族ばかりであれば、そこで働く者が顧客に「sir」を付けるのは当然である。日本の高級なホテルやレストランもそれに倣い、顧客には敬語を使って「様」と呼んだ。しかし戦後の日本では階級はなくなっており、そのしきたりが何の抵抗もなく庶民の間にまで広がったというわけである。

そう、ただそれだけの話なのだ。
それまでは、身分制度や儒教主義から発生する上下関係においてのみ使われていた敬語が、西洋文化を模倣する過程で取り込まれてしまったのである。

だからと言って、既に世間でのしきたりとなっているものに背いても仕方がない。利用者さんに「様」を付けるのに抵抗があるのならば、介護を他のサービス業とは差別化しなければならないだろう。

……明日のエントリに続く。

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