個室と多床室

厚労相、特養の個室化方針見直し示唆 多床室推進を念頭
http://www.asahi.com/politics/update/0314/TKY201303140362.htmlリンク切れました。

これまで厚労省は個室化を推進してきたが、この度それをさらに見直して、多床室を推進することも検討していくという。先の選挙での自民党の公約を踏まえてのことだろう。

当の高齢者世代はともかく、少なくとも介護者世代にとっては、個室化が進むことでその分費用が高くなるのであれば個室化などしなくてもよいという意見があるのは理解できるし、自民党はそうした層の支持を見込んで、このような公約を立てたのだろう。

私のスタンスは、エントリ「日本の住宅文化と施設の居室」で書いたように、
1. 個室であることは生活の場所としての必要条件(少なくとも自分たちの世代にとっては)
2. しかし、日本では個室はそれほど前から普及していたわけではなく、当の現在の高齢者世代はそれほどプライバシーを求めていない可能性がある
である。

これには経験も影響している。私は特養に勤めたことはないが、少なくとも老健では、ご本人さんが個室を望むことはあまりなかった。
それは部屋代がかかることを知っているから、という理由もあるだろうし、また老健なので一生ここにいるわけではない(いられない)から、ということもあるかもしれない。

ご家族さんも、居室の希望をお伺いすると、「個室では一人で寂しいだろうから、賑やかな多床室の方が本人も喜ぶでしょう」と言われることが多かった。
私はそれに対して、「日中はお部屋よりも食堂などで過ごされることが多いので、お部屋はあくまで寝室のようなものです。ですので、寂しいということは聞かれませんよ」などと答えていた。意地が悪いとは思うが、施設の相談員としては、できるなら個室を埋めたかったのである。

余談だが、私が勤めていた老健では2人室というものがあった。これがまた実にタチの悪い代物だった。
居室料は、1日あたり個室で1,640円、2人室で1,000円、4人室で320円。2人室は細長い部屋で、手前と奥に2つのベッドが並んでいるのである。奥はまだいいが、手前側にはプライバシーなどほとんどない。それで1,000円の差額ベッド代というのはいかがなものか。
事実、個室は少ないながらも希望される方がいたが、2人室は全く希望がなかった。結果、新規の入所者さんにはまず2人室に入っていただき、4人室が空き次第移動、という形を取っていた。早期の入所を望む申込者さんの足元を見ていたわけである。酷い話だが、上層部が居室料金の値下げは頑として認めなかった以上、他に方法がなかった。
それにしても、設計した人間の先見の明のないことよ。

話を戻そう。
個室化を進めるにしろしないにしろ、まず大切なのは、当の高齢者世代に意向を聞くことから始めることなのではないだろうか。料金が高くなっても個室を望むのか、それともプライバシーにはそれほどこだわらないのか。
もちろん、高齢者が介護が必要になった時に実際に金銭管理をするのは、多くの場合ご家族さんである。本人がいくら望んでも、個室では本人の年金で賄いきれないので無理、ということだって往々にしてあるだろう。
個室と多床室の割合は、その本人の希望と実際の年金額の受給額分布を見て、適切な比率で整備していけばいいのではないかと思う。

ただ、年金額の少ない方にしてみれば、余裕のある人は有料老人ホームに入れば良いのであって、特養は低所得者でも利用できなければ困るのであり、そのためなら個室化など必要ないという主張もあるかもしれない。
しかし、それでは特養は「本当は個室に入りたいのだがお金がないので我慢する」人が利用する、「収容施設」に留まってしまう可能性がある。

そうなってしまうのか、それともそれは考え過ぎなのか、それを知るためにも当の高齢者世代に意見を聴く必要があると思うのだ。

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