いちばんヘタ

うちの施設の入浴は、一般浴・特浴ともに個浴である。
10人程度のフロアそれぞれで、1日3~4人が、1人当たり30分ほどかけて入浴していただいている。

入浴のペースは、基本的には3日に1度、つまり2日おきだ。ただ施設には個浴でない浴室もあるので、以前個人的に、大浴室で複数名が同時に入浴するのならもっと入浴回数を増やすこともできるが、どちらがいいかと入居者さんに尋ねて回ってみたところ、皆が現在のペースでの個浴を希望された。
さすがに個浴であれば、今以上に1日当たりの入浴者数を増やすのは時間的に難しい。ただ例えば夕方など、やろうと思えば入浴介助ができるはずの時間もある。実際に私は夕方に入っていただいたこともあるが、そこまでの対応が必要なほど、入浴を希望される方はいないというのも現実である。

多くの職員は入浴介助の際、入居者さん1人につき30分ほどを費やしているが、私の場合は20分で足りる。これは決して私は手際がいいのだと自慢しているわけではない。むしろ逆で、30分かけることが許されるのに、慌ただしく短時間で済ませてしまっているのだと反省している。デイサービスでの修羅場を経験しているせいで、どうしても気が急いてしまうのだろうか。

今日、私は何か月かぶりに、とあるフロアの早番に入った。
入浴者を調整する際、普段の私なら午前の1時間で3人入ってもらうようにするところを、「今日は2人だけでも大丈夫。ならば、今日はその2人の方に、ゆったりと入浴を楽しんでもらおう」と考えた。

1人目に、100歳の女性の方に入っていただいた。認知症は全くなく、ADLの自立度も高い方である。
その方の入浴介助をするのは何か月ぶりになるのかも思い出せないくらいで、その方も「○○さん(私の名前)に入れていただくのは初めてですね」と言っていた。それは事実ではないのだが、さすがに覚えてはおられなかったらしい。
もっとも私の方も、その方に対しての細かな介助方法を覚えていなかった。それに時間に余裕もあったので、できることはなるべく自分でしてもらうため、極力こちらから手を出さないように心掛けた。

湯上りに体を拭き終わり、服を着ている最中でその方がぼそりと言った。「いちばんヘタですね」と。
意味はすぐに推測できたので、「ごめんなさい、もっとこちらからお手伝いした方が良かったですか?」と尋ねたところ、「そうじゃありません」と。
その方は、脱衣籠の中から、着替えを包んできた風呂敷を手に取り、言った。
「これだって、皆さん綺麗に畳んでおいてくれます。○○さんより若い男性でもできることが、○○さんにはできないんですね。このうち(施設)でいちばんヘタでした」

つまり介助方法がどうこうではなく、気配りが足りないということだ。
改めて謝罪した。

このブログでも何度か書いているが、私は自分の介護職としての能力は決して高くはなく、良くて中の下ぐらいだろうと思っている。
しかしうちの施設の多くの職員に比べればまだマシだと心のどこかで思っていたのも事実。その傲慢な鼻っ柱を見事にへし折られた。

思えばいろいろと入浴中に指摘されていた。
シャワーチェアーを、多くの方がそうしているように洗い場の中央に置いておいたら、「いつもはもっと湯船に寄せてもらってるんです」と言われた。
背中を流した後で、他の女性の方々と同じように、男性が前の方を洗うのは嫌なのではないかと思い「では前の方をどうぞ」とタオルを渡したら、「もう100歳にもなるので手の力がなくてできませんから全部やってもらっているんです」と言われた(その方の普段の生活を鑑みるに、できないわけはないのだが)。
足をかかとや足の裏、指の間まで丁寧に(特別丁寧にということではない。ごく普通にだ)洗ってさしあげたら、「いつもそんなに洗われていません」と言われた。

そんな個人的な好みに基づいた心配りが、その方の入浴介助に慣れていない私にできるはずはないし、普段「ご奉仕」されるのに慣れ、自分でやるのを面倒がっているだけではないか。それに足をきれいに洗うなど当然のことなのに、それを他の職員がしていないからと言って文句を言われるのは納得いかない。
一瞬そう思ったものの、やはりそれは単なる言い訳である。予め情報を仕入れておくなどの労を怠ったのは事実だし、きちんと尋ねた上で、改めてお願いするなどの方法を採れば良かったのだから。
風呂敷にしても、私は敢えて脱衣籠の中には手を伸ばさないようにしていたわけで、自立支援と気配りの境界線を測り間違えたのだろう。

やはり自分は未熟だなと改めて思った。それに傲慢だった。もっと謙虚であらねば。

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いちばんヘタ」への2件のフィードバック

  1. はじめまして(^^)
    老健の施設ケアマネとして働いています。
    悩みながら仕事をしており、
    いろいろウェブサーフィンをしていたら
    こちらのブログにたどりつきました。
    とても参考になります。
    今後ともよろしくお願いいたします。

  2. >umek(うめっく)様
    いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。
    参考になると言っていただけるのは、とても嬉しいです。ブログ開設者冥利に尽きます。
    お目に留まる記事がありましたら、ぜひまたコメントをお願いします<(_ _)>

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