入居者間の関係

うちの施設はユニット制のようでいてそうでない、ということは以前にも書いた気がする。要は、入居者さんは小さな単位に分かれているが、職員の配置は分かれていないのだ。

ユニットの最大のデメリットは、入居者さん同士の関係が悪くなったときに、離すという方法を取りにくいことではないだろうか。

うちの施設の1つのフロア(ユニットとは呼ばない)の話。
とある認知症の女性入居者さんがいる。以前は食堂で鼻歌を歌っていたり、職員と軽口を叩いたりと、とてもマイペースに上機嫌に過ごされていた。しかしこのところ周囲の方と罵り合ったり、職員にも乱暴な言葉を投げつけたりすることが多くなってきた。
きっかけは、新しい女性の入居者さんが入って来られたことのような気がする。

その新しく入られた方は、認知症の方の我儘に見える言動が気に障るようで、「脳病院に行っちまえ」などと怒鳴ることもあった。やむなく食席を変えて互いに目が合わないようにしたのだが、それでも意識はしているようで、今でも衝突がある。

認知症の方に本気で怒るというのは大人気ないことではあるが、といって大人の対応を要介護高齢者に強いても仕方がない。それに、その新しい方の気持ちも分からないことはない。自分が要介護状態になり、施設入所となったからといって、他の入居者さんの認知症状にもじっと我慢しなければならない、ということにはならないだろう。

湯呑にまだお茶が充分残っているのに、職員を「お茶!」と大声で呼ぶ。その時に近くに職員がいないと、「お茶持って来い! 聴こえねえのか!」とテーブルをバンバン叩く。これまでは職員が急いで駆けつけて謝り、お茶をいれ直すことで何の問題もなかったのだが、目の前でそんな光景を目の当たりにする他の入居者さんとしては、驚くのも無理はない。そこで「そんなことしちゃダメだよ」とたしなめることによって、「うるせえ! バカ!」と怒鳴られれば、それは喧嘩になっても仕方ない。
そもそも、その方は出もしない痰を出そうとしてティッシュペーパーを1日1箱ほどのペースで使われる。目の前で「カーッ」とやり続けられたのではたまったものではない。

その認知症の方にはもう一つ問題とされる行動がある。トイレットペーパーを共同トイレから持ち帰ってしまうのだ。
そこで職員はさりげなく取り返すのだが、時々察知されて怒られることもある。これは職員(私も含む)の対応の拙さを指摘されても仕方がない。
認知症のため出来事は全て忘れられるが、こうしたことの積み重ねが怒りを持続させ、不機嫌な時間が長くなってきているのだろう。

かく言う私も今日、大失敗した。
このところ午前中はベッドから出て来ずにずっと眠っていることが多く、もともと昼夜逆転気味なので、今日は起きて来てもらおうと、呼びに行って「お茶の時間ですよ。行きましょう」と言ってその方の掛けていた布団を剥いだ。
こうしたのは初めてではない。これまでは、「おお寒い」と言いながらも笑って、すぐに起きて来られていた。しかし今日は「何すんだ馬鹿野郎!」と怒られた。そこで急いで布団を戻したがもう後の祭りである。食堂へ出て来て、「誰かに寝てる間に歯を全部抜かれちまった。悪いことする奴がいるもんだ」と、もともと歯がなかった口の中を指して言い続けられていた。何故歯を抜かれたと思い込まれたのかは定かではないが、怒りの矛先がすり替えられたらしい。

できれば他の入居者さんと離し、以前のようになって欲しい。しかし小さな居住単位の中ではそれは難しい。問題はその方々だけでは済まないのだ。全員が食堂での「自分の場所」を手放すのを嫌がる。

頭の痛い問題だ。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中