声かけ

「声かけ」について。
これは私が使わないようにしている言葉の一つである。嫌い、というほどではないのだが。

「声かけ」「声がけ」共に広辞苑第五版には載っていない。
が、ググってみるとgoo辞書にはあった。以下の通り。

1 声を掛けること。挨拶をしたり安否を問うたりすること。「―運動」→呼び掛け
2 会合などに誘ったり、役職への就任などを打診したりすること。「社長の―でOBが復職した」

なるほど、互助や防犯のため、ご近所さんや子供に言葉をかけることを「声かけ」として、「声かけ運動」などを展開している町内会などが少なくないようだ。日本語にはなかった言葉ではあるものの、そうやって普及してきているのかもしれない。
2については、本来「呼びかけ」「働きかけ」と言うべきだろうし、こういう使い方はあまり聞いたことがない。本当にこんな使われ方をされているのかな?

介護の業界で使われる場合、2の意味はない。といって、1の意味だけでは充分でないだろう。
列挙すると、こんな感じになるのではないか。

1. 挨拶
2. 気分や体調、意思の確認
3. 相手の言葉への支持および賞賛
4. 行ってもらいたい動作の伝達
5. 励まし
6. 情報の伝達
7. お礼

これらは、介助場面において毎回普通に行われているはずのことである。と言うより、介助の一部だ。
またこの他にも、

8. 話題を振ること
9. 安否や困っていることの有無の確認

という意味もある。要はこちらから声を発することの全てに該当し得るのだ。計画や記録で用いるには曖昧過ぎる。

担当が作成するケアプランの原案に、「声かけを多くする」といった使われ方がされているのを時々目にする。これはたぶん、「放っておかないで話しかけましょう」ということなのだろうが、

そんなのは当たり前の話だ。わざわざ計画に書くことではない。

また、もう一つ理由がある。
「声かけ」という言葉は、言うまでもなく「声をかける」という目的語+動詞を名詞化したものである。なぜ名詞化する必要があるのか。
声をかけるというごく普通の行為を、「声かけ」なる名詞(業界内で多用されるという意味では専門用語と言ってもいいだろう)にすることによって、それがあたかも専門的な技術であるかのように見せたいという欲求が潜んでいるのではないだろうか。以前別のエントリで挙げた「アウトリーチ」と同じように。

もちろん、言葉は専門的な技術足り得る。それどころか、介護職員にとって最も重要な技術だと言っていい。
だから、軽々しく「声かけをする」などと書いて欲しくはない。

それと、そもそも私は名詞化が嫌いなのかもしれない。
例えば「声出し」「立ち上がり(単に起立するということではなく、歩行にリスクのある方が周囲の思惑に反して行う場合)」など、行動を描写する文章の名詞化もイラッとする。そこには、その方の個性を無視した行為の類型化が垣間見えるからだ。

しかしこれはまた別の話。

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