介護の独立を

介護保険制度が始まって12年。

介護保険制度は、急速に進行する高齢化と家庭の介護力の低下に速やかに対応するため、民間に大きく門戸を開放した。
そこに医療と介護を分けようという明確な意図があったとは思わない。おそらくは単に、医療費を抑制するために別立てとしたのと、医療従事者を中心にして介護をそこへ従属させられるほど介事業に進出できる医療従事者が存在していなかったからだろう。
この結果、医療と介護の連携がうまくいっていないことが課題となっている。

そしてこのところ、厚生労働省はこうした介護保険制度の現状を、自ら否定し始めているように思える。

サービス付き高齢者住宅の推進などは、デンマーク型の「住まいとケアの分離」を志向しているといって良いだろう。現に、例えば10月27日、東京都福祉保健財団主催の「第三者評価高齢セミナー ~介護サービスの質の向上に向けて~」における、前厚生労働省老健局長による基調講演でも、デンマークが引き合いに出されていた。
デンマークは公的なサービスが主体で、医療と介護はもともと統合されている(サービスリーダーは看護師)。と言うより、そもそも医療と介護がはっきり分かれている国など日本ぐらいのものだろう。多くは、訪問看護師が在宅医療・介護の中心を担っている。

そうした国から学ぼうとすることは、介護保険制度の失敗を認め、改めて舵を切り直そうとしているのに等しい。

こう考えてみると、定期巡回・随時対応型サービスは、巡回型ということや包括報酬ということよりも、訪問看護と訪問介護を一体化して提供することにこそ狙いがあるのかもしれない。
しかし蓋を開けてみれば、一体型よりも連携型の方が遥かに多かったのは以前のエントリでも書いた通りだし、そもそも普及が遅れている。
もはや医療にとって、介護への進出には魅力が感じられないのだ。介護事業が国から締め付けられているのを目の当たりにしているのだから。

介護保険制度は「走りながら考える」のはいいが、多種類のサービスを並列して作り過ぎた。そのため、制度としての軸がなくなってしまっている。その軸を作るのに、新しいサービスを増やすのではダメなのである。

そもそも制度創設時に訪問介護と訪問看護を分ける必要はなかったのだ。1つのサービスの中で、看護、身体介護、生活援助と分け、全ての事業所に一人以上の訪問看護師の配置を義務付けるべきだった。同じく通所の通所介護と通所リハ、ショートステイの生活介護と療養介護の区別も必要なかった。
たぶん、こうしたことは官僚も考えたのだろう。何とか軸を作ろうと、定期巡回・随時対応型サービスや複合型サービスが生まれることとなったが、介護の側から医療の領分へと手を伸ばすのは、介護側の人間にとって畏れ多い。よって医療と介護の統合はまたしても進まない。

こうなった以上、我が国は、医療と介護の統合を進めるのではなく、介護を医療から独立した一分野として、逆に世界から注目されるくらいにすべきではないかと思う。
そのためには、認定審査会において主治医意見書の偏重をやめ、更新の度に主事意見書を作成させるのではなく必要時のみとすること、居宅療養管理指導の報酬を上げる代わりに給付管理の対象とすること、短期入所の人員配置から医師を外すことといった改正を行い、代わりに介護支援専門員資格のハードルを非常に高くすれば良いのではないか。

もちろん、それでも連携は必要である。そのためには調整役である介護支援専門員資格のみを見直しても仕方がない。介護を、医療と並び立つ存在にしなければダメなのだ。

これを、住まいとケアの分離と同時に行う。それが、日本の介護保険制度の進んでいくべき道であろうと思っている。

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