経管栄養の方の食費

平成17年10月に、翌年4月の制度改定に先立って、介護保険施設入所者の介護報酬より、居住費つまり居室代と食費が介護報酬より控除されることとなった。
これは、在宅の要介護者であれば当然に負担している居住にかかる費用が、施設に入所していれば自分で負担しなくて済むというのはおかしい、という考え方によるものである。

これにより、居住費も食費も、施設が自由に設定できるものとされた。
しかし自由にして良いと言われると逆に困ってしまうもので、結局は多くの施設が、国が示した基準費用額(1日あたり1,380円)に横並びとなった。

ちなみに、それまでは食材費として780円が自己負担となっていた。調理にかかる費用(人件費その他)は介護報酬の中に含まれていたが、この分が介護報酬から切り離されて利用者負担となったために、1,380円ほどが適当ということになったのである。

と、介護保険施設での食費について参考までに大まかに述べたところで、今日の本題。

うちは介護付有料老人ホームであるが、食費は1日1,000円の設定である。
入社当時は、安っ! と思ったものだ。何しろ相場の2/3程度なのだから。

そんな安い金額に設定した理由は、特に誰からも聞いていないが、容易に想像できる。

どういうことかというと、食費を高く設定すればするほど、入居者さんが口から食事を食べられなくなった時に、施設の減収分が大きくなってしまうのだ。
入居者さんが経管栄養になれば、食事を施設から提供していない以上、食費はいただくことができなくなる。つまり、仮に食費を1日1,500円にしていると、お一人の方が経管栄養になると月に45,000円の減収になってしまうが、1日1,000円にしておけば、減収は30,000円で済むわけだ。

私が勤めていた老健では、経験栄養の方が摂取される濃厚流動食はむしろ普通の食材よりも安く済むので、却ってありがたいくらいだった(ただし職員の負担はもちろん増えるが)。
この、食費を徴収できなくなる問題は、有料老人ホームだからこそ生じるのである。

もちろん、1日1,000円で、食材費だけでなく調理職員の人件費などの諸経費も賄うことなど不可能。その分の費用は他の料金に転嫁せざるを得ない。

入居者さんが経管栄養になれば、職員の負担は確実に増大する。にもかかわらず減収になってしまうのでは、有料老人ホームが経管栄養の方を積極的に受け入れたくないのも当然である。

この事態を回避する方法がないわけではない。
栄養剤を主治医に処方してもらうのではなく、施設が医療保険外で購入する代わりに食費を徴収すれば良いのだ。しかしそれでは入居者さんに、主治医に処方してもらうよりも高い金額を請求することになってしまう。
痛し痒しである。

頑張って経管栄養の方を受け入れると、却って減収になる。
それでも私たちは、入居者さんやご家族さんが安心して暮らせる場所を目指して、頑張っていく方を選んでいる。

誰にも分かってもらえないけどね。

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