認知症の周辺症状に対する薬物療法

このブログでは、介護に直接関係しない政治や社会問題については採り上げないことにしている。
また、介護に関しても、事件や事故の報道については、固有名詞を上げてその内容を云々することはしない。報道される内容はえてして一方からの視点に偏ったものであり、見方を変えれば全く違った姿を見せるということが往々にしてあるからだ。

さて、数日前に、とあるグループホームが入所者に多量の精神安定剤を服用させ、保険者より指導を受けていたという報道がなされた。
その事件そのものに関してはここでは何も述べないが、認知症と抗精神薬については、なかなか難しい問題をはらんでいるので、それについて書いてみたい。

認知症状は中核症状と行動・心理症状(最近は周辺症状という言い方より、こちらの方が一般的)とに分けて考えるのが一般的である。
中核症状は記憶障害、見当識障害、理解・判断力の障害など脳の神経細胞が減少することによって直接起こるものとされ、行動・心理症状は性格、環境、人間関係などさまざまな要因がからみ合って起こる、うつ状態や妄想のような精神症状や、日常生活への適応困難とされている。
(参考:厚生労働省のサイト。)

つまり、脳の器質的な病変によるものを中核症状、そうでないものを行動・心理症状としているわけだが、両者の区分は厳密にはいかない。例えばうつ状態が現れているとして、それが脳の病変によるものなのかそうでないのかを判断することは、不可能ではないかもしれないが容易くはない。
そして精神症状があるのなら、それに対しての薬物治療は必要かつ適切な医療であり得る。しかしそうでないのなら、薬物治療はすべきではない。どこからが薬物治療が望ましい状態なのか、その答えはない。

うちの施設に入居されている方は現在28名。そのうち、抗精神薬を服用されている方は8名である。といっても、うち1名は抑肝散なのだが……まあその使われ方が抗精神薬に近い、ということで含めてある。
ここで自分のためにも改めて整理してみよう。

Aさん:セレネース
認知症。介護抵抗や感情失禁がある。内科の主治医よりの処方だが、いつ、どのような経緯で開始されたのか不詳。

Bさん:グラマリール
認知症。難聴があり声が非常に大きい。夜間眠れずに大きな声で職員を呼ばれ、周りのお部屋の方々の迷惑となっていたため、管理者が内科の主治医に眠剤をと相談したところ処方された。以後はそうした行為も消失。そろそろ中止してもよいかもしれない。

Cさん:パキシル(エントリ「パーキンソン病とレビー小体型認知症」など)
パーキンソン病と診断されている方。いつ、どのような経緯で処方されたのか不詳。
メネシットでドーパミンを増やし、パキシルでセロトニンも増やす……

Dさん:リスペリドン(エントリ「激しく陽気な興奮状態」)
うつ状態にあるが、時折陽気な興奮状態が現れていた方。そうした躁状態はなくなったが、うつ状態は変わりないように見える。

Eさん:リフレックス+セロクエル(エントリ「精神疾患のみによって要介護状態となった方」など)
強迫性障害。精神科病院からの入居で、薬は少しずつだが確実に減ってきている。確認行動も減り、笑顔も多く見られるようになった。

Eさん:リフレックス+レモナミン
認知症。在宅で暴言や暴力などがあり、精神科病院入院を経て、7月に入居された。内科の主治医により入院時の処方が継続。現在は非常に落ち着いている。

Fさん:セロクエル
認知症。「帰る」と玄関から出て行こうとされ、介護抵抗もあり。転倒リスクが高いが車椅子を使わずに歩こうとされることも多く、メンタルクリニックを受診し処方された。日中のこれらの行動にさしたる変化はないが、少なくとも確実に夜間はよく眠られるようになった。
ただ、肥満傾向が著しいのが問題。

Gさん:抑肝散
物盗られ妄想が強く、内科の主治医より処方された。この効果かどうかは不明だが、強く興奮されることはほとんどなくなった。

こんなところだ。
これらの薬が入居後に処方されたのは4名。Bさんは、興奮を抑えようとして出してもらったのではないし、Dさんは躁状態になった時の普段からの変わりようが尋常ではなかったので、身の安全のためにも、薬物療法は必要だったと思う。
ただ、FさんとGさんに関しては、どうしても必要かと問われると、私としては首を傾げざるを得ない。当時の施設看護師による主治医への相談の結果であり、施設ケアマネの私としては、そこまで強く反対すべきことでもないと考えたのだった。
本来なら、特にFさんは、もっと介護の部分でできることがあるはずだ。ただ、それにはケアマネがあれこれ指示するだけではダメで、現場レベルでの自主的な試みが必要だと考えていた。そのために信頼できる介護職員と協働していくつもりだったのだが、気が付けば現場は新人ばかり……

まだ少し言いたいことがあるので、明日に続く(かも)。

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