Death Comes As The End

昨日のエントリで書いた、肉を買われた方の話。あれからいろいろと思い返したことを書いておこうと思う。
比較的お若い、男性の入居者さんである。

その方は、離婚されていて一人身だった。先だって親族の遺産を手にしたばかりで、お金は充分すぎるほど持っていた。
うちは有料老人ホームであるが、入居されている方は決して裕福な方ばかりではない。その方がちょっと特殊だったことは断っておく。

うちに入居される半年ほど前に胃潰瘍で入院し、その時の検査で、前立腺がんと骨転移が見つかっていた。
70代で認知症は全くなく、施設に入居したのは、下肢の痛みのために一人暮らしでは不自由だろうと医師が判断し、ご本人さんもそれに従ったためである。

とは言っても。
その方はしょっちゅう外出し、友人やその子、孫たちにいろいろなものを買ってあげていたし、施設に内緒でこっそり自動車の運転もしていたようである。
また、よく通販で食品を買い、食べきれなくなって、私たちが自分たちの腹の中へ「処分」したことも一度や二度ではない。
さらにはシニアカーなども買って、施設の玄関先に置かれていた。それに乗られていたところはほとんど見たことがない。

私は入職して間もない頃、その方のお手伝いで軽トラックを運転し、トラクターなどを運んだことがある。これって介護の仕事なのだろうか? この人が介護給付をもらってるってどうなんだろう?と思ったものだ。

しかしその後、半年も経たずにその方のがんの状態は悪化、ベッドで過ごす時間が長くなった。主治医からも、あと3カ月くらいかとの見通しが、職員やご家族さんに伝えられた。

ことここに至って、鈍い私も事態に気がついた。
私が鈍いと言っても、施設看護師でさえ、がんの進行状態を正確には知らなかったのだ。だがご本人さんは知っていたはずだ。残された時間は、それほど長くはないのだろうと。
浪費はそのせいだった。少しでも多く金を使ってしまいたかったのだ。

そんな中、その方は正月に初詣に行きたいと言われた。
私が付き添い、大混雑の中、車いすを押させてもらった。お土産をたくさん買っていた。お酒も買って帰り、他入居者さんたちにも分けられ、皆で飲んだ。

それから3カ月ほどで食事が摂れなくなり、幻覚や興奮が強くなった。
夜勤者とは別に、夜間に希望する職員が付き添うようになった。

そして間もなくお亡くなりになった。

この仕事を続けていれば、関わっていた利用者さんがお亡くなりになることはよくある。
しかし私にとって、利用者さんの死が、単なる事実としてではなく、その方の人生を締めくくる出来事として心に刻まれるようになったのは、この頃からかなと思っている。

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