認知症による運転リスクの評価とマネジメント

昨日のエントリの続き。
アメリカ神経学会の「Evaluation and management of driving risk in dementia(認知症による運転リスクの評価とマネジメント)」について。

このガイドラインが最初に作られたのは2000年。以後パラメータの改訂が加えられ現在に至っている。
内容は、次のような疑問への回答という形で記述されている。

1. 国際的な認知症スケールのスコアは、運転能力の低下とどのくらい関連するのか?
2. 本人と介護者は、どの程度運転の危険性を正しく評価できるのか?
3. 事故歴などは運転能力の低下と関連するのか?
4. 神経心理学的テストは事故を予見できるか?
5. 事故のリスクを減らす介入方法はあるか?

運転能力の最も確実な評価方法は路上検定とのこと。この路上検定というのは、おそらく運転免許取得の際のものと同一だろう。
これにより、主に路上検定の結果と、認知症スケールや本人・介護者の評価などの関連性が、エビデンスに基づいた医療の手法によって検証されていくわけだ。

ということで、以下はそのガイドラインの抄訳。

1→CDR(Clinical Dementia Rating。一昨日のエントリ参照)はリスクの高い運転者を識別するのに有効だが、0.5(認知症の疑いあり)から1(軽度認知症)では、85~41%の方が路上検定で安全とみなされる。
MMSE(Mini-Mental State Examination。エントリ「認知症とテスト」参照)では、スコア24点をカットオフ値とすることで、危険運転をするリスクのある方を概ね識別できる。しかし実際のところ、スコアと運転技術にはさほどの相関関係はない。

2→介護者による評価は、路上検定の結果と相関し、運転が危険であるという判断はかなり正しい。しかし一方、安全であるという評価はあてにならない。

3→事故歴と交通違反歴は、運転能力低下を判断するのに有用である。
認知症のない高齢者と軽度の認知症の方では、走行距離と運転技術の拙さとは相関する。
また、夜間、悪天候、ラッシュアワーなど運転に際しての悪条件を自らすすんで回避しているからといって、より安全であるとは限らない。
積極的・衝動的な性格は、事故の危険を増大させる。

4→神経心理学的テストは、認知症の重症度を判定することはできても、運転のリスクを評価することはできない。

5→認知症の方が事故を起こさないようにするための介入方法で、充分なエビデンスのあるものはない。

以上をエビデンスグレードで分けると、以下のようになる。
① CDRスコア : A(強く勧められる)
② 運転能力の限界や危険性に対する介護者の評価 : B(勧められる)
③ 交通違反歴 : C(勧められるだけの根拠が明確でない)
④ 事故歴 : C(勧められるだけの根拠が明確でない)
⑤ 走行距離の減少。具体的には週に60マイル(およそ100km)以下 : C(勧められるだけの根拠が明確でない)
⑥ 運転に際しての悪条件の回避についての自己申告 : C(勧められるだけの根拠が明確でない)
⑦ MMSEスコアが24点以下 : C(勧められるだけの根拠が明確でない)
⑧ 積極的または衝動的な性格 : C(勧められるだけの根拠が明確でない)
⑨ 安全性に対しての自己評価を、判断材料としない : A(強く勧められる)

実際の手順としては、まずCDRを施行、スコアが2.0の場合は危険性が高いとみなし、0.5および1であれば、上の②~⑧を考慮して危険性を詳しく評価することが望ましい。

……とまあ、こんな感じである。
CDRがさほど普及していない日本で、これを邦訳したからといって、そりゃスタンダードにはならないだろう。
日本で普及している改訂長谷川式簡易知能評価スケールでは判断力や問題解決能力などは評価できないので、運転の危険性を推し量ることはできないし。

まあ結局のところ、当たり前ではあるが、「このテスト(もしくは一連の確認作業)を行えば、運転の危険度は正しく評価できる」というものが存在するわけではないのだ。

ということで、必死に英語と格闘したにもかかわらず、何かの役に立つのかどうかもわからないまま、このエントリは終了(^-^;

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