免疫グロブリンがアルツハイマー型認知症の進行を止める

免疫グロブリン静脈内投与療法(Intravenous immunoglobulin、略してIVIg)とアルツハイマー型認知症について。

IVIgは、人間の血液から精製した免疫グロブリンを静脈注射するもので、現在日本で保険適用が認められているのは重い感染症、特発性血小板減少性紫斑病や川崎病、ギラン・バレー症候群、天疱瘡といった自己免疫疾患などである。
IVIgはアルツハイマー型認知症の症状の進行を食い止めることができるというのは以前より言われているが、このたび、バンクーバーで開かれていた国際アルツハイマー病会議で、症状の長期間(3年間)安定に関する報告がなされた。
現在治験のフェーズ3が進行中とのことである。

アルツハイマー型認知症の進行を「遅らせる」とされる薬は現在いくつかあるが、「止める」治療法は今のところ他に例がない。そのため期待されていいのかもしれないが……

大きな問題がある。コストと供給量だ。

免疫グロブリン製剤の一つ、ガンマガードを発売しているバクスター社によると、現在先天性免疫不全症候群の方を1人治療するのに必要な献血は130人分だという。ここから、1人のアルツハイマー型認知症の方にかかるコストを計算すると、1月あたり1,500~3,000ドルになるという(参考リンク切れました。)。

これだけの費用がかかる治療法が、果たして保険適用されるだろうか?

月1,500~3,000ドルというと、日本で考えた場合、要介護の方が1ヶ月に受けられる介護サービスの総額と変わらない。つまりこの治療が保険適用となり普及すれば、社会が認知症の方にかける費用が単純に今の倍になる。

そうなると、この治療法は医療保険でなく介護保険で賄われるものとして、実質この治療を選択することにより区分支給限度額のほとんどを使い切ったとしても止むを得ないとするか、あるいは保険適用とせず、それだけの費用を自費で負担できる方だけが受けられる治療とするか、そのどちらかしかないように思われる。

それに、これはあくまで現在の価格に換算しての話だ。
アルツハイマー型認知症の方の治療に使われるとなれば、社会全体で必要になる量は今の何十倍にもなるだろう。血液製剤なのだから、そのニーズに合わせてどんどん生産量を増やそう、というわけにはいかない。そのためにはいったいどれだけの献血が必要になるか。
医療も市場なのだから、供給が需要に追いつかなければ、当然価格も上がるだろう。

こうなると、効果はあっても普及させられず、保険適用のないまま、一部の裕福な方だけのための治療になるのではないかという気がする。


2013.05.08追記:
ガンマガードはバクスター社による研究では、効果が見られなかったとのこと(エントリ「ガンマガードの失敗」)。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中