鍵のかかった建物

先日、うちの法人で計画している新規事業について、多くの方々の前でプレゼンする機会があった。
これについてはまた別のエントリで詳しく書くかもしれないが、今日は、その時の質疑応答で尋ねられたことについて書いてみたい。

私たちは、自分たちがこれまでに運営してきている事業所の特色の1つとして、「玄関に鍵をかけない」ということを挙げた。それに対し、「鍵をかけないのは、わざわざアピールするまでもない、当たり前のことに思えるのですが」というご意見を頂戴した。

その通りだと思う。

だが、その当たり前のことをしていない事業所が多いのも事実。
玄関ドアは外から入って来る時には普通に開くが、出て行くのには高いところに手を伸ばしてロックを外さなければならなかったり、暗証番号を入力しなければならなかったり。入所施設だけでなく、デイサービスでさえこのようなところを見かけることがある。

老健の認知症専用棟となると、棟が施錠されていないところを見たことがない。棟から出るには暗証番号を入れなければドアが開かなかったり、エレベーターが使えなかったりする。そうした暗証番号の入力装置を懸命に叩いたり、ドアを開けようとガタガタと揺さぶっている利用者さんを見たときのあの胸苦しさといったらない。

もちろん、こうしたシステムを導入している事業所を全て非難するつもりはない。利用者さんたちの状況や人員配置数等の理由から、やむを得ず行っているところも多いだろう。
それに、施錠はあくまで念のための策として行っているのであって、出て行こうとされる方が実際に玄関に行ってドアを開けようとする前に、何らかの対応をすることだってよくあると思う。
鍵をかけない代わりに、「うちは鍵をかけないので、出て行かれてしまう方はご利用できません」と利用を断っているところもあることを考えると、果たしてどちらの対応がより良いのか……

また鍵をかけずとも、赤外線センサーなどによって、玄関を誰かが通過したらそれに反応して職員に知らせるようなシステムを導入しているところもある。
利用者さんに「自分はここに閉じ込められている」という苦しみを与えることはないので、鍵をかけるよりは遥かにマシな対応と言えよう。

しかし。
鍵をかけていたりセンサーを設置していたりすると、「気づかないうちに出て行かれることはない」という安心感が職員の中に芽生える。その結果、どの利用者さんがどこで何をしているかという意識が薄れたり、出て行きたいという欲求そのものへのアプローチが疎かになりやすい。これも大きな問題だ。

うちの施設では、以前にも書いたが、離設事故が起こったことがある。その再発防止策として、居室の入口にセンサーマットを敷くという対応を行うこととした。その方が居室で休まれているのか共有スペースのどこかにおられるのか、それだけを頭に入れておくだけでも全然違うものだ。
これが唯一の理由ではないと思うが、以後は離設事故は発生していない。

安全のために予防策を取るのはやむを得ないが、それにより必要な努力を怠ってはならない。

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