Sundowning

介護従事者は日々実感していると思うが、認知症の方がそわそわと落ち着きをなくしたり、とりわけ「帰ります」と言われるのは夕方が多い。

「夕暮れ症候群」とか「たそがれ症候群」などと呼ばれるこの状態は、我々日本人にのみ見られるものではない。英語では「Sundowning」と言う。

なぜこうしたことが起こるのだろうか。いくつかの仮説が考えられる。

1. 日中に家から出て活動し、夕方帰宅するのが、古今東西を問わず一般的な修学や労働に際しての社会の慣習であるから。
長年続けてきたその習慣の記憶が、帰ろうという欲求を生じさせるというわけ。
この場合の「帰る」とは、「今いる場所から別の場所に移動する」というだけのこともある。よって、ご自宅にいながらにして「帰る」と言われる方もいる。

2. 日中の活動を経て疲労し、身体が休息を求めると、生物は少しでも安心して寝ることができる場所を求めるから。
単に自分が今いる場所には寝るための場所があると思えないだけかもしれないし、今いる場所は安心して休めないということかもしれない。つまり、ご自宅にいながらにして「帰る」と言われる方は、ご自宅ではくつろげていないのかもしれない。

3. ヒトの遺伝子に刻まれている概日リズム(サーカディアンリズム)により、おそらくは主に光量の変化(夕方になると薄暗くなる)が、体内のホルモン分泌等に作用するから。
つまりメラトニン(エントリ「Bed of Roses」「入浴は夜に」参照)などの分泌異常である。夕暮れ症候群が現れる方は、メラトニン分泌に異常をきたしており、それゆえ夜間不眠も見られるということはないだろうか?
まあ、認知症で不眠の方は多いので、夕暮れ症候群の方に不眠が多いからといって、すなわち両者には関連があるということにはならないが。

もちろん、それぞれの方が、必ずこの中のどれかが原因として当てはまっているというわけではないだろうし、複数の要因が絡み合っている場合もあろう。

それを踏まえ、「夕暮れ症候群」への対処法としては、
・ 活動の場所と休息の場所をはっきり分ける。日中も居室で寝たり起きたりで、食堂などの共有スペースに出るのは食事やお茶のときだけ、というのでは好ましくない。「この部屋ではなく、別の場所へ帰る」となってしまうからだ。
なるべくベッドから離れてレクや交流などの活動や、テレビを眺めて過ごすなどのちょっとした休息の時間を持っていただくことにより、「自分の帰る場所は、自分の部屋である」と感じていただければしめたものである。

・ 適度な昼寝や休息により、日中の疲労を抑える。ただしもちろん、長すぎて夜眠れなくなるようでは意味がない。
また、その方が「居心地がいい」と感じられるような空間を作ることが大切。

・ 夜間に、適度な長さの良質な睡眠が取れるような工夫。時にはロゼレム(エントリ「Bed of Roses」参照)などの薬を服用してもらうのも効果的だろう。

また、落ち着きをなくされる大まかな時刻が予め分かっているのであれば、先回りして文字通り「時間を忘れて」取り組めるような活動をしていただくのも良い。

こうした支援を、ケアプランを軸に、施設全体で取り組んでいく。もちろん、最初からベストな対応ができなくてもいい。試行錯誤を繰り返すうちに、きっといい方向に進んでいくだろう。

とにかく大事なのは、後手後手に回らないようにすることだ。
こうした状態は放置されると、えてして悪循環になるものだから。

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