パレイドリア

パレイドリアという言葉がある。
雲や染みなどの不定形のものが、人や動物などの形に見える現象のことだ。

心霊写真とされるものの多くはこれにより説明できる。まあ人の顔が映っているという心霊写真については、3つの点が集まっていればそれが顔に見えてしまうという、いわゆるシミュラクラ現象によっても説明できるとは思うが。
それに顔文字、つまり(^-^)←こういう単なる記号の並びが顔に見えるのも、これらに近い理由なのかもしれない。

東北大学大学院の森悦朗教授らのグループが、新たに開発した「パレイドリアテスト」を用いて、レビー小体型認知症患者において錯視を誘発することに成功したとのこと(リンク先参照)。

このテストは、花やネクタイなどの写真を見せ、その写真に何が写っているかを説明してもらうというもの。レビー小体型認知症の方では、その中に人や動物の顔や姿を見出すことが多いらしい。

なるほど。
ということは、つまり。

幻視には2種類あるのだ。1つは、完全に実在しないものが見えること。例えば、真っ白なスクリーンに人の姿が浮かび上がるように。
もう1つは、見間違えてしまうこと。白いスクリーンの染みを人の姿だと思ってしまうように。レビー小体型認知症の方の幻視はこちらのタイプなのではないか?

そもそも幻視はなぜ起こるのだろう。
視覚とは、目に入る光を網膜が電気的な信号に変換、それが視神経を経て脳により再構成されるプロセスである。私は、幻視というものは、その過程で何らかの余分な信号が混入することで、再構成される画像に本来は存在しないものが映り込んでしまうことだと思っていた。
しかし、レビー小体型認知症の方の幻視は、余計な信号の混入ではなく、信号の再構成の失敗により生まれるのではないか?

レビー小体型認知症、そしてパーキンソン病では、神経細胞内にレビー小体と呼ばれる異常な構造物が認められる。レビー小体は細胞毒性のあるαシヌクレインを封じ込めて無毒化しているという説があるが、ではαシヌクレインがどのように細胞の正常な働きを阻害しているのかと言うと、それはわかっていない(参考)。

パーキンソン病の方ではレビー小体は脳幹にのみ認められるが、レビー小体型認知症の方では大脳皮質にもみられる。つまり大脳皮質視覚野の神経細胞もダメージを受けていると思われるので、そこで障害が生じて幻視が生まれているのだろう。パーキンソン病の方に幻視があまり見られない理由もこれで説明できるわけだ。
また、レビー小体型認知症の方の幻視が、単に「子供がいる」ではなく、「子供が悲しそうに泣いている」というように、実に「生き生きとしている」理由も、おそらくここにある。

幻視が、余計な信号の混入により生じるのか、それとも信号の再構成の失敗により生じるのかは大きな違いであると言えそうだ。
両者は分けて考える必要があるだろう。

ところで、認知症の方が「さっきそこにお父さんがいたの」と言われたりすると、我々は幻視だと思いがちだが、この場合は幻視ではなく記憶の障害である可能性も高いと思われる。「見た」のではなく、誤った記憶が「作られた」わけだ。
アルツハイマー型認知症の方の幻視は、本当は幻視ではないのではないかと。

一言で幻視と言っても実はいろいろなタイプがあり、それを見極めないと、適切な医療や介護はできないのではないだろうか。

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