ドーパミンと性衝動

昨日の明け方、夜勤者が男性の入居者さんに胸をわしづかみにされ、反射的に手をはねのけたところ、「次はどこを触って欲しい?」と言われるということがあった。

この入居者さんはパーキンソン病の方で、時々こうした性的な言動がみられる。先日も若い女性職員に「いつになったらやらしてくれるんだ」と言ったとのこと。
パーキンソン病治療薬であるレボドパやドーパミンアゴニストの副作用として、性欲亢進が現れているのだろうか。実際、パーキンソン病の男性の方で、こうした言動をされる方には何人もお会いしてきた。

介助時に手を伸ばして女性職員の体を触るなんていうのはよく聞く話で、私がこれまでにお会いした中にも、女性利用者さんのベッドに潜り込もうとしていたため職員が止めると、「何するんだ! この人だっていいって言ってたんだぞ!」(もちろん事実ではない)と激怒された方や、入浴時に若い女性職員に自らの陰部を必要以上に丁寧に洗わせようとした方などがおられた。

パーキンソン病の方はドーパミンが不足し運動障害が起こる。そのためドーパミンの前駆物質や、ドーパミンと同じ働きをする物質を服用されるのだが、ドーパミンは運動だけでなく他の働きも持っている。快楽もその一つである。
よってこうした性欲亢進状態が現れてしまうのだろうということは、容易に想像がつく。

つまり。
本来であれば、視覚的刺激や身体的接触などによってA10神経からドーパミンが放出され、人は愛や性欲を感じ行動するが、パーキンソン病の方では、外部から取り込んで増やされたドーパミンがそうした作用を生じさせることがあるのだろう。

我々は通常、好みの異性に近づいた程度では性衝動に突き動かされることはない。ドキドキすることはあっても、充分に自制できる。だから突然相手の体に手を伸ばしたりはしない。
しかし、相手から「好き」と言われたり、キスをした後でならどうだろう? ドーパミンが放出されて性衝動が動き出していれば、たとえ急に「嫌」と言われたとしても、体に手を伸ばすのを止められないというのはありうる話だ。
パーキンソン病のために薬でドーパミンを増やしている方は、言葉や接触などが何もない状態で、いきなり性衝動が動き出すのだ。女性に手を伸ばすのを抑えられないのも無理はない。

……なんてことを考えた。

ところで、ドーパミンで思い出したのだが。

統合失調症の陽性症状である妄想や幻覚などはドーパミンの分泌異常が原因という説がある。
パーキンソン病の方も、支離滅裂なことを言われたり、発している言葉が文章にならなかったり、妄想が現れることがあり、これらは統合失調症と共通点がある。
しかし幻覚は少ないし、自我が崩れる(自己と他者の境界があいまいになって、他人の考えが頭の中に入ってくるとか、逆に自分の考えが他の人に伝わってしまうとか感じる)ことはまずない。これらの統合失調症の症状は、ドーパミンの分泌異常とは別の機序で起こるのかもしれない。

アルツハイマー型認知症やパーキンソン病は、脳内の物質の反応という点では、精神疾患と共通するところがある。両者を知ることが、お互いの理解の助けになるのではないだろうか。

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