施設入所申込と地域包括ケア

第90回社会保障審議会介護給付費分科会資料より。
資料7 特別養護老人ホームにおける待機者の実態に関する調査研究事業について。

平成22年度の「特別養護老人ホームにおける入所申込の実態に関する調査研究」では、特別養護老人ホームへの入所申込者に関する様々な状況や、特養側から見て優先して入所させるべきと思える入所申込者は1割強に過ぎないことなどが示されていた。
そして平成23年度の調査では、特養から入所可との連絡が来たらすぐに入所するかどうかについての本人・家族の気持ち、居宅ケアマネが考える入居の必要性、特養以外の施設も検討したかどうか等についての結果が出されている。

いくつか抜粋すると、

・特養への申込者のうち、今すぐに入所する必要はないが、将来への不安から早めに申し込んでいる人が全体の半数弱ほど存在する。
・実際に順番が回ってきても、3~4割の申込者は入所を断る。
・入所先について、特養以外を検討していないのは、家族では4割弱、ケアマネでは6割強。

などとなっている。

実際、「特養は申し込んでもなかなか順番が回って来ないので、早めに申し込んでおいた方が良いですよ」という話はよく耳にする。
私は特養の内部事情には詳しくないので、実際のところ「入所できますよ」という連絡を受けたものの、結構ですと辞退するケースがどの程度あるのか知らないが……この調査では、それが3割にもなっている。しかも、既に別の特養に入った方はこの中には含まれていないと思われるので、実際にはもっと多くの「待機者」が入所を辞退するわけだ。

入所が必要になったら、すぐに入れるようになることが望ましいのは言うまでもない。
しかし、だからと言って常に空床を抱えておく余裕など、どこの介護保険施設にもありはしない。

となると考えられるのは、地域の介護保険施設への入所申込状況を、一元的に集中管理する機関を設けることだ。
誰が特養への入所を必要としているか、現状と緊急性はどうか、といった情報を常時管理。社会資源としての地域の入所施設から求められた場合に情報を提供し、施設はそれを参考に入所者を決める。というように。
こうしたことが行われるようになれば、緊急性が高くなればすぐに特養に入所することができるので、将来のために申込をしておくなんて無意味なことはなくなるだろう。

この役割を担うのは、本来であれば地域包括支援センターが望ましいだろう。
しかし地域包括支援センターの設立は、地域内の事業者が名乗りを上げて保険者からの委託を受けるだけなので、地域内にある他の介護サービス事業者は全くの無関係。となると、他の事業者が申込についての情報を預けるのには抵抗があるだろう。競争相手でもある、施設を併設する社会福祉法人や医療法人の運営する地域包括支援センターであればなおさら。「包括と言ってもどうせ自分のところの利益が最優先で、自施設に有利な運営するんでしょ」と思われるのがオチ。
だったら行政がやればいいのかもしれないが、それでは措置時代に逆戻りである。

ならばいっそ、それらの介護保険施設、事業所とは利害関係のない第三者、例えば社会福祉士事務所などがそうした役割を担うのもいいのではないか、なんて思ったり。
誰かこういう事業に乗り出してみないかな?

問題はプライバシー保護である。
施設に入所するために、そこまで申込者の個人情報を管理されてしまうというのはどうなのだろうか。

まあ、そもそもここまでやる必要があるのかと言われると、別にないかも(^-^;
しかしいずれにしろ、この、「必要な時にはすぐに施設に入れる」ということは、地域包括ケアで必要な条件なのではないだろうか。万一の時には特養が助けてくれるという安心感があれば、できる限り在宅生活を続けていこうという意欲も湧く。
逆に言えば、それができないのなら地域包括ケアに特養などの施設を含める意味がない。

特養が地域包括ケアの中で自らの存在をアピールしようと思ったら、待機者問題に対処することこそが、おそらく最も手っ取り早く、効果が大きいのではないかと思う。

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