電車で受診

エントリ「精神疾患のみによって要介護状態となった方」「確認行動」「確認行動その後」「疾病利得」の続き。
ADLは自立しているものの、精神疾患(診断名はうつ病だが、少なくとも入所以降はあまりうつ病らしいところはなく、むしろ強迫行動が激しい)のために要介護認定を受けられた方の話である。

その方の確認行動は、以前とは比較にならないほど減った。
早番や遅番、夜勤者が出勤してくると、「食事の時間になったら呼びに来てね」などと確認されるのと、あとは調理職員に「ご飯はちゃんと時間通りにできますか?」と幾度となく念を押されはするが、以前のように職員を追って他の方の居室まで入られることはない。
私がフロアを歩いていて確認行為に出くわし、「あー、見ちゃったー!」などと言うと、「一回だけだよっ」と言いつつニヤリと笑われる。
満面の笑みとはいかないが、微笑程度なら一日に何度も見られるようになった。

事務所に降りてきても、最近だとセンバツ高校野球の話など雑談をして行かれる。私は野球に興味がないので全然満足なお相手ができず、申し訳ない限りだ。

さて、その方のメンタルクリニックの受診は、当初はご家族さんが連れていってくださっていたが、最近では職員が付き添うようになっている。車で2~30分の距離なので、これまでは普通に施設の車で行っていた。

しかし今日の受診は、付き添った担当ケアマネの発案で、電車で行くこととなった。

その方は電車で行くのを嫌がり、「タクシーで行きます!」と主張していたが、ケアマネは「タクシーは高いし、それに電車の方が早いですよ」などとはぐらかし続けた。その方は薬に依存しているところがあり、受診に行けない=薬がもらえない、となることは承知されている。行かないわけにはいかない。
渋々、出かけて行った。

私はその方の受診に付き添ったことはないのだが、なにしろ強迫性障害がおありの方である。待合室でじっと待っていられず、幾度となく「まだですか」「早くして」と訴え続け、時には寝転んでしまったりもするらしい。
ご本人は病院に行くだけでも必死なのに、その上公共交通機関というのはちょっと可哀想なのでは……と思い、ケアマネになんで電車なのか聞いたら、「そろそろ、そういう場所に出ていく訓練もしていかないとと思って」とのこと。

なるほど!
素直に感心した。

確かに、要介護度がつかなくなってうちの施設を退所することとなれば、嫌でもご自宅へ帰らざるを得ないし、そうでなくとも、いずれご自宅へ帰れればそれに越したことはない。
であれば、そろそろ在宅復帰を視野に入れた支援を行っていくべきだ。

それにしても、既成概念に縛られず、電車で行こうなどということをさらっと思いつくのはすごい。
私なら何も考えずにいつものように車でお連れしただろうし、たとえ思いついたとしても、電車でお連れする大変さが先に立って、車で行く方が楽だからと考えてしまっただろう。

結果は、見知らぬ乗客の中で人目を気にしてか、少なくとも外見は穏やかに電車に乗って行き、帰ってきた。メンタルクリニックの先生にも驚かれ、そして褒められたらしい。
成功だった。

こうした支援は、病院への付き添いに対して料金を徴収できる有料老人ホームだからこそ可能なことであって、介護保険施設では難しいだろう。
住まいとケアの一体化は、介護保険施設に比べれば特定施設の方がずっと緩いので、こういうことができる。
本当ならその料金は完全に自己負担ではなく、9割とはいかなくとも何割かが保険から支給されると良いと思う。その代わり、何の支援もしていなくとももらえる定額の介護報酬は減らされてもいいから。

こうした試みがどんな施設でも普通にできるようになるといいな、と心から思う。

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