謎解きはディメンティアについて

残念ながら終了してしまったが、NHKで『総合診療医 ドクターG』という番組が放送されていた。

NHKのサイトには「病名を探り当てるまでの謎解きの面白さをスタジオで展開する新感覚の医療エンターテインメント番組」とある。
総合診療医が主に問診によって患者の疾患を探り当てるまでの過程を、再現VTRを通して辿りながら、パネラーである研修医に病名を考えさせ、ゲストタレントを通して我々一般視聴者にも理解できるように説明しつつ最終的に一つの病名を浮き上がらせる、そんな番組だった。
クイズの「正解」としての病名は我々一般人は知らないようなものばかりだし、絞り込んでいく過程でも専門的知識が飛び交うので、我々が正解にたどり着くのはまず無理である。それでも、「甲状腺?」「心臓かなー?」「感染症じゃない?」など、大筋では当たっていると言えなくもないこともあったりして、我が家では夫婦であれこれ言いながら観ていた。
まだHDDレコーダーに観ていない回が2つ録画してあるのだが、もったいなくて観られない。そのくらい楽しみだった。

原因疾患を探り当てる過程は、本格ミステリにも似ている。
(本格ミステリというのは、英語でパズラーとかフーダニットとか言われる、謎を解き明かすことを主眼とした推理小説のこと。この言葉の定義の話とか「ミステリー」でなく「ミステリ」である理由とかを語り始めると一晩では終わらないので、まあ『名探偵コナン』みたいなもの、と思っていただければいいだろう。)
主に患者の言葉とバイタルサインのみという「手がかり」によって、疾患という「真相」を導き出す過程はミステリそのものではないか。

さて、そうした医学的領域は、我々介護職が直接扱うものではない。医学的知識も資格もない者が原因疾患を勝手にあれこれ考え、何らかの対応をするのは良いことではない。
しかし我々には、同じような手法が生かせる専門分野がある。

認知症ケアである。

認知症の方を前にしたとき、介護職が一番してはいけないことは、「認知症なんだから仕方がない」と思ってしまうことだ。
「帰りたいと出て行ってしまうのは認知症なんだから仕方がない」というように。

認知症の方であっても、全ての行動には原因がある。もちろんその源は生理学的なものだったり、我々の手の届かない領域だったりすることもあるのだが、充分我々の守備範囲に収まっていることも多いと思う。

例えば、「○○を盗まれた」という訴えはどこからくるのだろう。
認知症による被害妄想なんだから考えても仕方がない? 薬物療法に頼る?

それでは全然介護のプロフェッショナルとは言えない。
性格。生活暦。生活環境。対人関係。そうした情報を手がかりにして、「盗まれた」という訴えへと繋がる因果関係に介入する。

プライドが高く、自身の物忘れを許容できない。そのため、あるはずの場所に物がないことの原因を他者に求める。
家族の中の特定の誰かが自分に敵意を向けていると感じており、自分もその人を好きではない。
これまで、極力他人の世話にならずに生きてきた。
お金に苦労をしたことがない。
会話が少なくて寂しい。

こうした手がかりを積み重ねていって、訴えの原因を探り、その原因に働きかける。目的は、「盗まれた」と訴える行動をなくすことではなく、その原因が好ましいものではなかった時に、それを解消すること。

寂しさを、共に生きていると実感できる温かさへと変えるように。

介護職員よ、名探偵であれ。

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