主治医を変える

うちは介護付有料老人ホームであり、入居者さんたちの主治医はバラバラである。

もちろん協力医院はあるので、入居の際に、例えばそれまでの主治医のところへ通うのは大変だなどといった事情があれば協力医院を紹介するが、特にお勧めしているわけではない。
また、主治医を変えたくはないんですが、受診に連れて行くのもちょっと……と言われれば、職員がお連れする。
柔軟な対応が可能だ。

こんなことがあった。

とある女性の方。入居された後も、それまでの主治医のところへご家族さんが連れて行ってくださっていた。ご本人さんが、若い頃からその医院に通っていて、先生への信頼もあるからだ。
夜間頻尿に悩まされており、過活動膀胱の薬と、眠れないこともトイレが気になってしまう原因だということで、眠剤が処方されていた。
施設職員が直接先生と話していなかったため、ご本人さんやご家族さんを通してでは症状が先生に正しく伝わっていなかったのか、治療はあまりうまくいっていないように思われた。

ある夜、その方がトイレに行こうとして転倒、右手を骨折した。
眠剤によるふらつきが転倒の理由として考えられたが、歩行の不安定さは日中にも見られたため、断定することは却って他の危険因子を見逃すことともなりかねない。
とはいえ、眠剤は中止となった。そしてその際に、眠剤と一緒に就寝前にのんでいた、過活動膀胱の薬も中止された。
私はこのことを後で知った。

次の定期受診に先立ち、ご家族さんより、骨折により歩行器で歩いて行けなくなったため、施設の方で連れて行って欲しいという依頼があった。
もちろんお断りする理由はない。そして、この際、往診してくださる協力医院の先生に主治医を変えてはどうか、という話になった。
往診となれば施設の看護師が診療の場に居合わせることになるので、先生と施設の連携がしやすくなる。間にご本人さんやご家族さんが入るよりも格段に。
そこで受診に付き添った私が、先生にこの旨をお伝えして紹介状をお願いしたところ、「それなら僕が往診しますよ」ということになった。

そう言われてしまえば、「いえ、それでも別の先生に変えたいんです」とは言えない。そもそも往診してもらえるなら、連携の問題も解決する。その先生が往診をしてくださるというのは意外だったが、あらかじめきちんと確認しておけば良かった。

しかし、それでひとまず一段落……とはならなかった。

夜間頻尿が再発どころか酷い状態になり、一晩に20回もトイレに行かれるようになった。右手を骨折しているためコール対応としたが、どうしても呼んでくださらないので、やむなくセンサーマットを使わせていただいた。
初回の往診までに日数もあるので、あまりに辛いようであれば泌尿器科を受診していただこうか、と話していた。
そんな中、その方のケアプラン担当と看護師が言った。やっぱり主治医を変えたいんですが、と。

私は仕事で怒ることはほとんどない。何しろ自他共に認める「適当」な人間なので。
だがこの時には怒りを表に出した。

往診をしてもらえない、あるいは連携を試みたがうまくいかない、なので主治医を変えましょう、というのは良い。だが今回は、連携を試みることもなく、それまでご本人さんやご家族さんに任せていて、しかも過活動膀胱の薬が手違いで眠剤と一緒に中止されていたのだ。そうした事情を考慮せず、「あの先生にかかっていても良くならない」というのは先生に失礼だと思った。

転倒後すぐ、ベッドをトイレの目の前まで移動させたものの、それでも頻繁にトイレに行くのは負担になる。そこで相談員の判断でポータブルトイレを置かせていただいた。
そしてある朝、ポータブルトイレの片づけをした相談員が、尿が濁っていて臭いも強いことに気づいた。本当なら現場職員が気づいて報告してくるべきだが、これがうちの施設の現状である……
それはとにかく、相談員と担当が相談して泌尿器科受診となり、膀胱炎と診断された。

適切な医療を提供することは大事だ。
ご本人さんの意向を大切にすることも必要だ。

そして、筋を通すことも。

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