住宅型有料老人ホームと併設事業所

私は以前、住宅型有料老人ホームと、それに併設された通所介護事業所と訪問介護事業所の管理者を兼任でやっていたことがある。
居宅介護支援事業所も途中から併設されたが、そちらは一人ケアマネが管理者も兼任していたので、私の管轄ではなかった。

ご存知の方も多いだろうが、住宅型有料老人ホームは基本的には住まいと食事を提供するだけであり、入居者さんが必要とされる介護は、外部(経営を一にするか否かを問わず)の居宅サービス事業所が担うこととなる。とは言え、訪問介護を入れるまでもないようなコール対応や短時間のトイレ介助、掃除や洗濯などは、管理費としていただいている部分で行っていた。
入居にあたっては、ケアマネを併設事業所に変更してくださいとはお願いしていなかったし、通所介護や訪問介護の事業所についても、「併設の事業所でなければダメです」とは言っていなかった。それが事業所を立ち上げた私たち職員の感覚では「当たり前」だったのだが、法人としてはなかなか認め難かったようだ。しかしそれは、経営者としては当然だとも思う。

通所については、わざわざ迎えに来てもらい車に乗って出かけていくほど、「どうしても別の事業所がいい」という方はいなかった。しかし訪問介護については、サービスが必要な時間帯が朝と夜、つまり起床時と就寝時に集中してしまうので、併設事業所だけでは対応できず、外部の事業所にも来てもらっていた。
ケアマネジメントでも「何とか限度額いっぱい併設の事業所を使ってもらうようにしよう」とは考えていなかったので、介護度の低い方などは週2回の通所介護利用だけという入居者さんも多かったことを考えると、住宅型有料老人ホームとしては良心的な運営をしていた方だと思う。世の中には、同一法人内のケアマネに入居者さんのケアマネジメントを一任し、必要のあるなしに関わらず、限度額いっぱいに併設事業所のサービスを入れてもらうことを事実上強要する住宅型有料老人ホームも少なくない。

それでも、適正な運営をと考えると、厄介なことは多い。

まずは通所介護について。
入居者さんは、デイ利用中であっても、昼食後には昼寝のため居室へ戻りたがられる。もちろんお気持ちは分かる。しかし、ご自宅から通われている方であれば、それがいくら徒歩数分の近所であっても、デイ利用中にご自宅に帰るなんてことはまずない。併設の住宅型有料老人ホームだって、当然そうあるべきだろう。
よって、デイ利用中にお部屋に帰られることがないように工夫してみた。デイルーム内に昼寝できる場所を確保し、またそもそも昼寝の時間を設けずに、13時からレクをやっていた。それでもダメ。
昼寝に戻られれば、その分の時間はやはりデイの利用時間から差し引くのが筋だ。そうすると、6時間以上8時間未満の利用時間での請求が難しくなるので、正直にそれをご本人やご家族に伝え、デイルームにいてくださいとお願いした。すると、「それだけの時間デイにいたことにして、請求してもらって構いません。だから部屋には戻らせてください」と言われる。
じゃあそうしますね、って訳にもいかず、ではなるべく早くデイルームに来てもらって、夕方もマッサージ器などを使っていただく順番を一番最後にするなどの工夫をし、何とか昼寝の時間を除いても6時間はデイルームで過ごせるように努力したが、どうしても引き止められずに6時間に満たなければ、やむなく短い時間での請求を行うのが正しい、となる。

また訪問介護については。
介護度が低い方は全く利用の必要がなく、逆に介護度が高い方は、普通にサービスを組んでいると限度額内にはとても収まらなくなる。
限度額を超えた分はすべて自費で、とすると、ひと月の自費負担が10万円を超えてしまうこともある。それだけの負担を入居さんにお願いするのは心苦しいため、こちらとしては「朝食と夕食は訪問介護での食事介助を入れるが、昼食の介助は住宅型有料老人ホームの持ち出しで」などとなる。これはまだいい例で、時には「月水金は訪問介護で、火木土日はホームの持ち出しで」などとせざるを得ないことだってある。もちろんやっていることは同じなのに。
訪問介護として請求する分については、適切なサービス提供ができているのであれば、保険請求して何ら問題はない。保険請求しない分についても、それはホームが管理費の中で賄っているのだから、あくまでホーム内部の問題であって、外部から口出しされることではない。私はそう理屈をつけて限度額以上の請求をしないようにしていたが、そんなことをしていては、人件費がかかるばかりで施設の収入は増えない。

こうなると、デイで稼げるだけ稼いで、その分をホームと訪問介護の赤字に充てるしかない……となってしまう。こうしてトータルで何とか運営している、という住宅型有料老人ホームは決して少なくないと思う。

しかしこれは、考えてみれば、ホームの入居者さんの介護の費用を、外部からデイに通って来られる方々に賄ってもらっているのに等しいのだ。
いいのかな、これで?

また、通所介護については職員を専属配置するのは簡単だが、訪問介護についてはなかなか難しい。住宅型有料老人ホームと兼任として、訪問介護事業所で必要とされる常勤換算2.5人を確保するために、それぞれに分けて勤務表を作るのは、なかなか面倒なのである……(ノ_;)
そうやって常勤換算で2.5人を確保しても、「その日その時刻は訪問介護に従事していることになっている」職員について、その時間の全てを訪問介護サービスに従事できるように……なんてサービス予定を組めるものではない。どうしても待機時間が生じてしまい、そうなると、デイやホームの業務に従事している職員からすると、「何もしないで遊んでいるのか」となってしまう。
と言って、では空いた時間はデイやホームで仕事してもらいましょう、となると、その時間は訪問介護事業所にいるとは言えなくなってしまう。これもまた実に悩ましい。

私がいなくなった今では、そこまで厳密に考えずに適当にやっているのかな。

住宅型有料老人ホームという形態は、介護度が低いうちはいいのだが、介護度が高くなると利用者負担が膨大になるか、施設の持ち出しが増えるかのどちらかとなる。どちらにせよ、介護度が高い方が安心して住める場所にし、それを維持していくのは難しい。

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住宅型有料老人ホームと併設事業所」への3件のフィードバック

  1. 同じ状況で私も悩んでいますが、看取る事も視野に含めた施設ならもっと細かくガイドラインを引き施設長含め起こりうる対応策を考えて欲しいです(~_~;)

  2. >ワンだフォー様
    いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。
    住宅型で看取りは大変ですよね。私の勤めていたところでも、経営者は安易に「最後までみさせていただきます」なんて言ってましたが、具体的に何をしてくれるわけでもなく、結局現場の我々としては、ホスピスなどに移っていただくという判断をするしかなかったことも多くありました。
    困難の多い運営形態だと思いますが、頑張ってくださいね!

  3. 有り得ないことだらけですよね。私が勤めている有料老人ホームは、デイサービス利用時間が終了しても居室に帰らず、そのままデイサービスエリアで夕食を食べて貰ってるんですよ。朝食も同じくですよ。

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