介護サービス事業者のISO取得

私がこの業界で最初に勤めた法人は、ISOを取得していた。

ISOが求めていることを、薄れつつある記憶を頼りに大雑把に説明すると……
「経営者が品質方針を定め、部署ごとに責任と権限を定めて品質目標を設定、PDCAのサイクル(エントリ「ケアマネジメントのプロセス」参照)を回し、あらゆる業務の手順書を作る」というところか。

ま、こうしたプロセス自体は、やって悪いことはない……と言うか大いに結構なことである。ただ、それをどのように、本来求められているサービス向上につなげていくかというのは、意外に難しかったりする。介護サービスの評価は、数値化できるものばかりではないのだ。目標の達成の度合いを測るためには数値化できることが必要だが、そうするとえてして数字ばかりに目が行き、本来の目的がおざなりになるという本末転倒が起きる。

品質目標とはどんなものかというと、例えば私は相談員部門と事務部門の責任者だったので、それぞれの部門で立てたのが、確か相談員部門では「在宅復帰率を30%以上にする」など、事務部門では「全職員の名札使用率を100%にする」などだった……ような……
介護部門では、「年6回の外出」とかじゃなかったかな?

ところで、サービス提供は、計画に定められた通りにきちんと行われているかを日々確認していかなければならない。介護サービス事業における計画といえばケアプランであるから、私の勤めていた事業所では、ケアプランで定められた援助内容を確かに行いましたというチェック表を、ISO取得にあたり新たに作成した。
例えばオムツを使われている方に対し、1日8回オムツ交換を行います、となっていたら、行うごとにチェックとサインをしなければならない。もちろん、1人の方が必要とされる援助は1つだけではないし、それが100人分あるのだ。しかも、ケアプランの援助内容には「頻度」の欄がある。食事介助やオムツ交換などであれば1日に行う回数はほぼ決まっているが、回数が決められない援助だって存在するわけだ。そういう時には、頻度の欄は「随時」などとされるのだが、その場合、○をつけてサインする回数は日によって変わってくる。
実際には日々の業務の中ではそんなチェックをしている余裕はなく(と言うよりも、現場の職員はISOなどに関心はないので、そんな無意味な作業に協力する気はさらさらない)、内部監査の直前になると、数名の職員が泊まり込み(もちろんサービス残業)で、ひたすらケアプランの実施表に、適当にサインの名前を変えつつ丸をつけていくのだ。
さすがに今ではこんな馬鹿らしい作業はしていないだろうが……

ISO取得は、経営者の鶴の一声で始めても、現場の職員は必要な書類を揃えることでいっぱいいっぱいで、その目的を共有するどころではない。
やるのなら、「今やってることをマニュアル化するだけでいいから」なんて説明だけではなく、サービスの向上意識につなげていかなければ、職員のモティベーションが上がるはずもなく、時間と金の無駄遣いで終わる。

確か取得にはコンサルティング会社への支払いも含めて、初年度300万くらい、次年度以降は80万円ほどかかっていた。 それだけのコストパフォーマンスを出せている事業者が果たしてどれほどあるだろうか。

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