タクティールケアと対人関係論

先日、「認知症緩和ケア理念とタクティールケアの実際」という体験セミナーに参加した。

認知症緩和ケアとは、認知症の苦しみや症状、社会的な障害を和らげることで、QOL(生活の質)を向上させるケアを意味する。スウェーデンのベック・フリース医師が提唱したもので、このケア理念を補完するツールとして、タクティールケアが推奨されている。

タクティールケアというのは、多くの方はご存知だと思うが、手や足や背中を、手で優しく撫でるように触れるというものだ。
これにより、実際にオキシトシン(出産時に子宮を収縮させたり、母乳の出を良くするホルモンだが、脳内の神経伝達物質として、愛情や信頼など人と人の心の結びつきを強める効果があると言われる。自閉症治療にも効果が期待されている)の分泌を促すことができるらしい。
その結果、周辺症状を軽減・消失させることが期待できるのだとか。

オキシトシンの分泌と言うと、ちょっと「ホントかよ(-_-; 」という感じもしてしまうが、タクティールケアによる周辺症状の軽減・消失は、精神力動的にも説明できると思う。

私は、認知症の周辺症状は対人関係の問題から現れると思っている。
実際に誰かとの関係が悪化している、ということはなくとも、認知症により言葉でのコミュニケーションが充分に取れなくなり、人とうまく接することができなくなれば、対人関係の維持にとっての障害となる。その結果、他人との関わりを求める欲求が行き場をなくし、周辺症状として噴出するのではないか。

であれば、タクティールケアというスキンシップを介して、失われていた対人関係が実施者との間で新たに作られたり、また実施者=介護者であれば、薄れかけていた関係が補強され、その結果、周辺症状を引き起こしていた負のエネルギーが力を失ったとしても不思議はないだろう。
スキンシップが、非言語的なコミュニケーションの手段となり得るならば。

さて、ここで想起されるのは、アメリカの精神科医サリヴァンの対人関係論である。

サリヴァンは、幼少期における対人関係(母子の関係、友だちとの関係)が後の人格形成と神経症の発症に重要な影響を与えると考えた。
とすれば、認知症の周辺症状も、認知症高齢者特有の現象と捉えるべきものではなく、どんな年代の人にも見られる、対人関係の問題から生じる神経症と同じなのではないだろうか。

タクティールケアは、希薄になった対人関係を修復したり、創造したりする効果があるのかもしれない。今回は単なる体験セミナーだったが、もっと学んでみたいと思った。

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