おそらくは認知症薬物治療の一事例

認知症の周辺症状が強くなってきて周囲の方へ迷惑がかかり始めると、やむなく、医療が必要ではないかという話になってしまうことがある。

とある方の話。
もともと一日中、物がなくなったと訴えられている方だったが、それが高じて深夜に他の入居者さんの居室にまで入り込まれるようになってしまった。
ご家族と相談の上、初めてメンタルクリニックを受診。そこで、ロナセン(2mg)1錠が処方された。

初めて聞く薬だった。調べると、セロトニン-ドーパミン拮抗薬ということで、リスパダールみたいなもの?
認知症の周辺症状を抑えようとした場合、妄想にはリスパダール、せん妄にはセロクエルあたりが処方されることが多い。ああ、なるほどね……と、その時には思った。

しかし数日が経過したところで、改善が見られないまま排尿障害らしきものが現れたため、ロナセンはあえなく中止。
だがその1週間後、再び他の方のお部屋に入られたのを機に再開となり、その後も3錠、つまり6mgまで増量された。
尿失禁が増えたが、失禁が多いということは鎮静がかかっていると医師に判断された。実のところ、被害妄想には変化はなかった。他の方のお部屋に入ることこそなくなったが、それだけの元気がなくなっただけとも言える。またこの頃から、声が甲高くなった。声帯の辺りの筋肉が強張ってでもいたのだろうか。
そして最初の処方から2ヶ月後、ぼーっとして立てなくなり、ロナセンは2錠に減量、それでも変わらず再度1錠に減量。
そこから再び2錠に増量された後、食事量がみるみる落ちて水分も充分に摂れなくなり、入院となった。

入院中、どの時点でロナセンが止まったのかは定かではないが、いずれにしろ中止となり、不眠に対してデパスが出ていた。
病院では抑制されていたこともあり、よくあることだが、見事に元気のない状態で帰って来られた。付いた病名は、摂食嚥下機能障害、脱水症、不安神経症。

退院後は主治医が替わり、リスパダールが出ている。夜に職員を大きな声で呼び続けることがあり、職員が訪室するといったんは安心されるのだが、退室するとまた大きな声で呼ばれるのだ。夜勤者がずっとその方に付き添っているわけにはいかないし、ご本人の生活のリズムのためにも夜は休んでいただきたい。

結果、夜は比較的よく休まれている。最近、食事量も少しずつ増え、表情も明るくなった。元気になった証だろうか、ものがなくなったという訴えも再び始まりつつある。

ロナセンがアカンかったのか!
……って思うしかないよね?

もちろん仮にそうだとしても、これはただの結果論で、ロナセンを服用してもらっている間は、直接メンタルクリニックの先生と相談する看護師も、状態を観察して記録する介護士も、この先どうなるかなんて分かるはずもなく、常に迷いながらの対応だった。多分、メンタルクリニックの先生も。

それでもご本人にしてみたら、大変な目に遭った、どころではない。
私も責任の一端を感じる。

また杖をついて事務室に降りて来て、「ちょっと、この家、一体どうなっちゃったの!」と文句を言って欲しい。
それを心から待っている。

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