内反尖足との戦い

うちの施設に、内反尖足の進行が著しい方がいる。
座位で両膝をまっすぐ前に伸ばしてもらうと、足首は180度以上に伸び、爪先どころかほとんど足首の辺りで左右の足が重なり合ってしまう。
自分の意思で足首を曲げることができないので、足首が伸びたまま、ベッドのL字バーやトイレの手すりで斜め懸垂のように腕力のみで立ち、移乗されている。

私はこれまで、こんなに酷い尖足の方に会ったことがないが、うちの20代後半の看護師(もう辞めちゃったけど)に聞いたら、時々見かけると言っていたから、私がたまたま会わなかっただけなのだろう。

この方の尖足の原因は分からない。後天性の場合、脳梗塞後遺症で麻痺側に現れたりするというが、その方には脳梗塞の既往はないし、もちろん麻痺もない。
最近は臥床している時間が長くなっているが、以前はそんなことは全くなかったので、布団の重みで足背が伸びてしまったとも思えない。ただ、最近はしていないが、車椅子のフットレストを外しており、手と足で車椅子を自走される習慣が長かったので、その影響は多少あるかもしれない。
また、パーキンソン病との診断名が付いている。パーキンソン病のせい?

その方は、歩けるようになりたいという希望がとても強く、歩行練習に執着している。
歩行練習は、肘を載せるタイプのキャスター付き歩行器を脇の下くらいまで高く上げ、上腕でぶら下がるようにして行われている。当然、全く安定していない。サークルの中でよちよち歩きを始めた赤ちゃんのような感じだ。
また極端な内股になってしまって、両足をぶつけながら歩いている。さらには、おそらくは無理な体勢で歩いていることが災いして、膝まで変形してきているのがはっきり分かる。

こんな歩行練習をして、たとえ今よりも歩行自体は安定したとしても、実用性などありはしない。立ち上がりはほぼ腕力のみで行うので、固定されていない物、つまり歩行器ではつかまって立つことができない。座ることができないのももちろんである。
この歩行練習は、私が入社する前から行われていて、ご家族の依頼によるものである。つまり、本人が歩きたがっているから歩かせてあげたい、歩くにはこうするしか方法がない。というわけ。

しかしこんな歩行練習は、すればするほど膝が変形して、却って歩けなくなっていくのでは?
そもそも歩けるようになるという見込みはあるのか?

少し前になるが、私がその方の受診に付き添った際に、整形外科の主治医に相談してみた。すると、やはり再び歩けるようになるのは無理だろうとのこと。しかしそれを本人に伝えると意欲が失せ、心身の機能が落ちるだろうから、絶対に伝えるべきではないとのことだった。
ご家族も、ショックを受けるだろうからとても伝えられないと言う。

そう遠くない未来、歩けなくなる日が来る。今の対応は、単にそれを先に延ばしているだけで、却って可哀想だと私には思える。
歩けないなら、そのことをはっきりと伝えて車椅子の生活を受け入れてもらい、その上で、自立度を高めていくための訓練をしていく方がいいのではないか?

とは言え、主治医とご家族、そして何よりご本人の意向なので、歩行練習は続けている。機能訓練計画の目標は、長期も短期も同じく、「歩く練習を続けられる」である。機能が回復するとは、ご本人以外誰も思っていないのだから。

こうなったら、少しでも長く、歩く練習を続けて欲しいと思う。しかしこの調子だと、それもあと何ヶ月続けられるか……

現在の個別機能訓練計画のメニューは、歩行と立ち上がり・立位保持、そしてフットレストに足をきちんと載せることである。
立ち上がりと立位保持は、自重で足首を曲げることになるので、尖足の進行予防にはいいと思って(素人判断だけど……)勧めているが、ご本人が熱意を持っているのはあくまで歩く練習。まず歩いて、その後余力があったら立ち上がり訓練、といった感じである。
フットレストに足をきちんと載せれば、足首は直角になる。なるべくその姿勢で長く過ごしてもらうことも、尖足の進行予防になるのではないかと思って計画に入れてみた。
しかしご本人が、痺れてくると言ってすぐに足をフットレストから下ろしてしまう。

また、かなり太っている方なので、もう少し体重を減らした方が立ちやすいですよとダイエットを勧めたのだが、ご本人は「わかってるんだけどね……」と言うばかり。食事の量は多くないのだが、間食が大好きなのである。お部屋で大福やアイスなどをよく召し上がっている。
ご家族は、可哀想でおやつを取り上げることはできないとのこと。

私は「歩けるようにならなくて良いのなら、もう私も厳しいことは言いません。おやつのことも、足首を曲げているようにすることも。どうしますか?」と聞くと「歩きたい」と答えられる。が、何が変わるわけでもない。

歩けるようになりたい。だから歩く練習をしたい。でもおやつは我慢できないし、足首を曲げるのも疲れるから嫌だ。
あのなあ(´Д`;)

……が、それが年寄りというもんである。それならそれでこちらも手を打っていかなければ。

私が今考えているのは、トイレの動作が同時に足首矯正の訓練にもなるよう、斜め懸垂で立ち上がるのではなく、バーに体重を預けて、足首に自分の体重をかけてしっかり立ち、移乗するようにしてもらいたいということだ。尖足進行を予防すると同時に、脚力も鍛えられたら……と思っている。
そのためには、便器の前方に、身を乗り出して体重を預けられるバーがあればいいのだが、そういうものはうちの施設にはないため、改装が必要となる。
管理者に頼んでみたところ、業者等と調整してくれた。しかし共同トイレには便器と洗面台の位置関係により設置不可、居室トイレは壁から離れすぎていて、適当な跳ね上げ式のバーがないとのこと。

さて、どうしたものかな……

あ、そうだ。その方、元は看護師である。

なのにどうしてそうなの(ノ◇≦。)


2012.01.15追記:
この方、圧迫骨折の既往がありました。
それが尖足の原因のようです。なるほど……

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